MONTHLY FEATURES 今月の特集

現地まで食べに行く贅沢!グルメドライブ旅

現地まで食べに行く贅沢!グルメドライブ旅

春の足音が聞こえてくるこの季節。
冬の寒さから出不精になりがちだった人も、そろそろアクティブに遠出のドライブなんていかが?
今特集では、久留米から日帰りで行けるオトナな”グルメドライブ旅“をご提案。
わざわざ訪れるから、美味しさもひとしお。
パートナーや友人を誘って、美味なる旅へ繰り出そう!
撮影スポット/大分県佐伯市上浦大字津井「瀬会公園」
車両協力/[ルノー久留米インター] ☎0942-45-1500
※写真は「Renault TWINGO(ルノー トゥインゴ)」

遠出してでも食べたい逸品を求めて――

スマホひとつで、日本中いや世界中から”お取り寄せ“できるこの時代。とはいえ、現地で食べてこそ感じられる味わいを持つグルメも数多くある。「その逸品を求めて」と言いつつ、あちこち寄り道しながら景色や観光も堪能して、ようやく辿り着く待ちこがれた逸品。これぞまさに、オトナの贅沢ではないだろうか。
旅の気分を盛り上げてくれるステキな愛車に颯爽と乗り込み、オトナな”グルメドライブ旅“へといざ出発!

幻の丼ぶりを探しに大分県の最南端へ

取材1日目。「九州でも絶品の生しらす丼を食べられるお店がある」との情報を耳にし、九州自動車道から大分自動車道、東九州自動車道へと車を走らせて向かうのは、大分県の最南端に位置する佐伯市。佐伯堅田ICで高速を降りて、さらに車で約20分の米水津の港を目指す。ここに佐伯市で唯一、「生しらす」を提供している食事処[豊洋丸]がある。こぢんまりとした小さな店ながら、評判を聞きつけて福岡や北九州など県外から来るお客さんで連日満席になる繁盛店だ。
少し遠回りになるが、せっかくなので海沿いの人気スポット「瀬会公園」に立ち寄ってみる。キラキラ光る美しい海を眺めながら、心地良い潮風を浴びて運転の疲れをリフレッシュ! 目的の港まではもう少し。車窓から流れゆく景色とともに、胸の高鳴りが加速していく。

”元祖・茶碗むし“の異名を持つ老舗を訪ねる

長崎新中華街を歩く
長崎新中華街を歩く

取材2日目は、ご当地グルメが満載の長崎市へ。ちゃんぽんや皿うどんをはじめ、トルコライス・角煮まんじゅう・カステラなどたくさんの名物があるなか、今回のお目当ては長崎を代表する郷土料理「卓袱料理」だ。提供店は長崎市公式観光サイトに掲載されているだけでも7軒。私たちは大きな茶碗むしにも心惹かれて、元祖・茶碗むしと蒸寿しの店として古くから市民に親しまれてきた、創業150余年の老舗[吉宗]にお邪魔することにした。
観光客で賑わう長崎新地中華街から、かの有名なめがね橋の方へと歩き、路面電車が走る観光通りを渡り切る。その先のアーケード街を進み、ふたつ目の十字路を曲がると見える立派な店構え。軒下に飾られた幾つもの赤い提灯が、遥々訪れた客人を出迎えてくれる。


佐伯市の生しらす丼

生しらす丼 1296円

美味い魚の宝庫・佐伯は、日本屈指のしらすの産地

黒潮おどる豊後水道に面した佐伯市は、国内有数の漁場。太平洋と瀬戸内海の海水がぶつかり合う水域ゆえに生まれる様々なプランクトンを目当てに、大量の魚が集まる。水揚げされる魚介は50種を超え、種類の多さは日本一とも。
海の幸が豊富に揃う同市は、全国で指折りのしらすの産地としても知られる。しかし、どこの市場や魚屋を訪ねても目にするのは、ふっくら炊きあがった釜揚げやその後に乾燥させたしらす干しなど加工品ばかり。しらすは茹でると白くなることから漢字で「白子」と書くとの一説もあるけれど、獲れたては身が透き通っている。艶やかに輝くそのさまは実に美しく、食感や風味は茹でられたそれらとはまさに別物。一度は味わってみたいものだが、しらすは非常に足が早いため、産地ですら生で市場に出回ることは滅多にない。
そんな幻ともいえる「生しらす」を求めて伺ったのが、米水津の港でしらす料理を提供する[豊洋丸]だ。

父親が名付けた船の名を店の屋号に
父親が名付けた船の名を店の屋号に

しらす漁ひと筋30年。鮮度抜群の「生しらす丼」

米水津漁港の目の前に佇む食事処[豊洋丸]を切り盛りするのは、しらす漁師の妻である料理が大好きな金田真智子さん。意外にも開店当初は、佐伯名物「ごまだしうどん」の店だった。趣味で始めたごまだし作りが高じて店を出し、間もなくして「せっかくなら美味しい生しらすをお客さんに楽しんでもらいたい」と、しらす料理の店へと転身。父親から受け継いだしらす漁と懸命に向き合い続けるご主人の輝正さんが毎朝獲る新鮮なしらすを、奥さんが調理して元気にもてなす。「生しらす丼」をはじめ、釜揚げやかき揚げ、ピザなど様々なしらす料理で客の舌をうならせている。
暖簾を掲げて今年で丸10年。この店を目がけて県内外から多くの人が訪れる人気店だが、新鮮な生しらすを安定して出せるようになるまでの道のりは、決して簡単ではなかったという。

”鮮度が命“の「生しらす」夫婦の熱い想いが実を結ぶ

「しらすはとてもデリケートで、網にかかった瞬間から鮮度が落ちていきます。生で食せるのは獲れた当日だけなんです」と真智子さん。ゆえに佐伯では米水津のほか、漁がある佐伯湾と鶴見湾で水揚げされたすべてが漁獲後すぐに釜揚げ加工場へ運ばれている。
輝正さんは生しらす本来の風味や食感を損なわず提供するべく、大きな網で長時間かけて行う二艘曳きから、比較的短時間で小さな網を引き上げる一艘曳きに変えることを決意。試行錯誤の末、漁の時間が大幅に短縮され、より新鮮な状態で真智子さんが待つ店へ届けられるようになった。なかには、生きたまま水揚げされたしらすも!
これにより鮮度の問題はクリアしたのだが、漁は常に自然の海が相手。漁獲量は日により異なるため、年間を通して生しらすを出し続けるのは至難の業だった。そこで、獲れたての鮮度を約1ヶ月間も保てる急速冷凍機の使用を漁協組合に掛け合い、不漁の日でも生しらすを提供できるように。
こうしてやっとの想いで、納得の「生しらす丼」を実現させたのだ。とはいっても、数が少ない日もあるので、事前に問い合わせて予約までしておくと安心。天気の良い日は、海が望める素敵なデッキで潮風に吹かれながら頂くのもいいだろう。

しらすPIZZA トマトソース

1,512円水・木曜限定で登場する石窯ピザも大好評! 生地やソースもイチから手作りし、由布院から取り寄せるこだわりの薪で焼き上げる。しらすの釜揚げとチーズの相性が抜群の「しらすPIZZA」をはじめ、全7種を用意。テイクアウトもOKだ。

しらす料理の豊洋丸

 ☎  0972-35-6959
[所] 大分県佐伯市米水津大字浦代浦680
[営] 11:30〜16:00
[休] 金曜※ほか不定休あり
[P] 有


長崎が生んだ卓袱料理

「お鰭をどうぞ」で始まる長崎のおもてなし料理

鎖国時代に外国との交易を唯一許された長崎。来航人から唐風・南蛮風の料理が伝わり、この地の豊かな山海の幸に用いられ、和の良さも加えたことから和華蘭料理とも評される卓袱料理が生まれた。卓はテーブルを、袱はテーブルクロスを意味する。身分の上下関係なく1つの円卓を囲み、器に盛られた料理を自分の小皿に直箸で取って頂くスタイルだ。 料理は「お鰭」と呼ばれる吸い物から始まり、女将の「お鰭をどうぞ」を合図に宴がスタートする。

穴子のそぼろ・錦糸卵・桜でん粉がのる三色の「蒸寿し」と、かつお節をメインにした出汁が香る大きな「茶碗むし」

歴史を感じる趣深い店内で手軽に卓袱ランチを堪能

現在は料亭で味わうのが主流で、婚礼の席で出されるのも珍しくない。そんな少し格式高く感じる卓袱料理をランチで手軽に楽しめるということで、長崎で江戸の昔より続く元祖・茶碗むしの店[吉宗]へ。
店先に着くと、ちょうどお昼を終えたであろう団体客がみな満足そうに出てきた。その顔を見て「美味しそう」から「美味しいに違いない」へと、予感が確信に変わる。中に入るとそこは、老舗の風格漂う外観に引けをとらない趣深い和の空間。赤絨毯が敷かれた階段を上った先には、これまた風情あるお座敷が広がる。
「当店は長き伝統を大切にしています。初代・宗吉の味をそのまま作り繋ぐ茶碗むしと蒸寿しはもちろんのこと、長崎の町家ならではの雰囲気も手を入れながら守り続けているんです」と、広報の国枝さん。
ここでは通常の卓袱料理のほかに、膳で提供する「ミニ卓袱」が用意されている。ミニ卓袱にはお鰭がついていないものの、梅酒・刺身・湯引・三品盛・角煮・香の物・果物・しるこに、茶碗むし&蒸寿しという2つのスペシャリテを添えた10品が並ぶ十分すぎる内容。ちなみに取材した1月下旬の三品盛は、河豚の唐揚げに海老グラタン、牛ごぼうであった。
約30年前は博多にも支店を出していたことから、[吉宗]の味を懐かしむ福岡県民もそう少なくないはず。長崎町家の伝統意匠を再現したという中庭をガラス越しに望める1階には、カウンターや2人席もあるので、1人旅でも気軽に立ち寄ってみて欲しい。
異国情緒あふれる長崎の街にお腹も心も満たされたところで、家路に着いた後のお楽しみに角煮まんとカステラも買って、さて帰ろうか。

吉宗 本店

 ☎  095-821-0001
[所] 長崎県長崎市浜町8-9
[営] 11:00〜21:00(OS20:00)
[休] 第2火曜、元旦
[P] 近くに有料Pあり