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この先も伝えたい植物のチカラ 毎日の生活にスパイスを

この先も伝えたい植物のチカラ 毎日の生活にスパイスを

「カレー」「エスニック」「激辛」など、昨今の食ブームの影に常に存在するスパイス。
“パクチー女子”なんてのもまだ記憶に新しいだろう。
こんなにも人々を虜にするその魅力は、美味しさだけではない。
古来から伝わるスパイスという名の“家庭の医学”が、今見つめ直されている。

なぜ夏にカレーなの?

スパイスを使う代表的な料理といえば、やっぱりカレーではないだろうか。暑い夏は特にそそられるが、そこにはちゃんと理由がある。
例えば、カレーの主なスパイスとなるクミンやコリアンダーは消化促進・食欲増進、ガーリックは疲労回復、カイエンペッパーは発汗や消化機能活性化の作用を持つ。これらの薬効が食欲不振や夏バテを回復させ、汗をかくことで体内にこもった熱と水分を外に出して皮膚表面の温度を下げてくれる。
つまり〝夏にカレー〟は理にかなっていて、身体が欲するから自然と食べたくなるというワケ。気温が40度超えにもなるインドで毎食カレーのようなスパイス料理が食べられているのも納得だ。

スパイスは先人たちの知恵

スパイスの定義や区分には様々な見解があるが、「植物で薬理のあるもの」というのがひとつの定義。食べながらにして体調を整えるものとして古くから伝わり、古代エジプトではミイラ作りでクローブやシナモンが防腐の目的で使われていた記録も。日本においても、生姜や山椒を示す「はじかみ」という言葉が古事記に記されている。
食べ物の防腐や健康に役立つスパイスは人が生き抜くために欠かせない価値ある存在で、「スパイス戦争」たる奪い合いまで勃発。人類の歴史はスパイスなしでは語れないほど、先人たちの生活に根付いていた。

今こそ自然由来の生薬を

そんなスパイスも医学や技術の発展とともに代用品が数多く生まれ、いつしか料理を美味しくするための〝調味料〟という位置づけになりつつあった。それが昨今、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)やナチュラル志向の追い風もあり、自然由来の生薬として再び世界中が注目している。
今回話を伺った、スパイスやハーブの講師である大庭さんによれば、その背景のひとつに現代の深刻な大気汚染の問題があるという。
「安全と思われているオーガニックの農作物も、残念ながらPM2・5や黄砂がもたらす人体への影響は加味されていません。そこでスパイスの出番。スパイスを一緒に摂ることで解毒作用や利尿作用が働き、それらの有害物質が体内に蓄積されるのを防いでくれるんです」
薬と違って適量なら副作用の心配もなく、安心して口にできるのは本当に嬉しいこと。それに、スーパーでも様々な種類が手に入り、より身近により手軽に使えるようになった。好みや気分に合ったブレンドで、オリジナルのカレーやスパイスソルトを作るのも最近のトレンドだ。私たちの暮らしをもっと楽しく美味しく、そして健康にしてくれるスパイス。この夏から日常に取り入れてみては?


何百種とあるスパイスのなかで、手に入りやすい14種を特徴とともにご紹介。
家族の体調や料理に合わせてチョイスしよう。

 覚えておきたいスパイス14種
  • 1(spices)

    カイエンペッパー(唐辛子)

    辛味づけに使うお馴染みのスパイス。味にメリハリがつくため、塩分減に利用すると◎

    [作用]
    消化機能活性化、発汗、脂肪燃焼
  • 2(spices)

    カルダモン

    世界各国で珍重される“スパイスの女王”。清涼感あるスパイシーな香りと苦味が特徴

    [作用]
    消化機能活性化、腸内ガスの排出
  • 3(spices)

    ターメリック(ウコン)

    カレーの黄色はこのスパイスによるもの。肝機能に良く、飲酒前に摂ると二日酔い防止に

    [作用]
    抗酸化、強壮、肝臓の機能向上
  • 4(spices)

    ローレル

    葉一枚で料理にコクが出る。煮込み過ぎると苦味が強くなるので、1時間程で取り出そう

    [作用]
    腸内ガスの排出、抗菌
  • 5(spices)

    ペッパー(胡椒)

    昔から世界中で親しまれる“スパイスの王様”。ブラック・ホワイト・グリーンに分けられる

    [作用]
    血行促進、筋肉の緊張緩和
  • 6(spices)

    コリアンダー(パクチー)

    日本でも一躍人気者になったエスニック料理の必需品。種子は意外にも甘く爽やかな香り

    [作用]
    消化機能活性化、腸内ガスの排出
  • 7(spices)

    レモングラス

    葉に傷をつけることで、爽やかなレモンの香りを放つ。刻んだり揉んだりしてから使って

    [作用]
    消化機能活性化、防虫
  • 8(spices)

    クミン

    カレーの香りの正体はコレ。エスニックな風味があり、深煎りすると香ばしさがUP

    [作用]
    腸内ガスの排出、鎮痛
  • 9(spices)

    タイム

    “魚のハーブ”と呼ばれるほど魚と相性が良い。ティーにすれば喉の痛みや咳止めに役立つ

    [作用]
    抗菌、痰の排出
  • 10(spices)

    バジル

    β-カロテンやビタミンEが豊富でアンチエイジングに効果的。イライラを抑える働きも!

    [作用]
    消化機能活性化、抗酸化
  • 11(spices)

    スターアニス(八角)

    甘くて強い香りの星形スパイス。香りづけに使え、中華料理に加えるとグッと本格的に

    [作用]
    消化機能活性化、腸内ガスの排出
  • 12(spices)

    ローズマリー

    スッキリとした香りで臭い消しや風味づけに用いられる。若返りや記憶力向上にも期待大

    [作用]
    抗酸化、消化機能活性化
  • 13(spices)

    クローブ

    “歯医者さんの香り”で知られ、強力な殺菌・鎮痛作用を持つ。肉料理や果実と相性抜群

    [作用]
    防腐、抗菌、鎮痛
  • 14(spices)

    シナモン

    菓子作りでは甘みが引き立ち、肉料理では風味づけに。飲み物に入れる際は香りを楽しんで

    [作用]
    消化機能活性化、抗菌

印のあるスパイスは使用前に禁忌を要確認

スパイスの豆知識

消費期限切れになったら?

消費期限は2〜3年と長いものの、開封後はなるべく早めに使い切るのが吉。とはいえ、一度にたくさんは使わないので頻繁に出番がないと余ることも。そんな時は、小袋に入れてサシェを作ってみて。防虫や消臭といった作用に応じて飾る場所を選ぶと、薬効をより実感できるはず。

保存は冷暗・遮光・密封を心がけて

スパイスは光・水分・熱・空気中の酸素により、香りや色が劣化して薬効も弱まってしまう。そのため、冷暗・遮光・密封が保存のポイント。ただし、冷蔵庫には入れないで。出し入れする際の温度差で結露が起き、カビの原因に。使用後は蓋や袋はすぐに閉じて酸化を防ごう。

監修

久留米アロマ&ハーブスクール 大庭 美香さん

目眩や頭痛、さらには薬の副作用に苦しんでいた頃、スパイスやハーブの自然療法に辿り着く。2014年に念願のスクールを久留米で開校し、かつての自分と同じように救いを求めてくる人たちに講座を行っている。月に2回開催する「カラダが喜ぶハーブランチ会」も大好評!

 ☎ 0942-39-1631(完全予約制)
[所]久留米市日ノ出町78-1 2F
[営]10:00~20:00
[休]火曜
[P]有※要問合せ


レパートリー広がる簡単レシピ

豚肩ロースのスパイシーオーブン焼き

材料(2人分)
豚肩ロース(ブロック)250g 小さじ1 ブラックペッパー(粗挽き)小さじ1 ガーリック 1片※パウダーでも可 ローズマリー(生)1本
付け合わせ用(分量はお好み)
ジャガイモ ミニトマト ズッキーニ 粒マスタード オリーブオイル適量 キャラウェイシード小さじ1 水に対して3%の量
作り方
  1. 豚肩ロースに擦り下ろしたガーリックをすり込み、塩とブラックペッパーをまぶす
  2. 1とローズマリーを一緒にタコ糸で縛り、強火にかけたフライパンで全面にこんがりと焼き目をつける
  3. たっぷりの水を入れた鍋に、塩と風味づけにキャラウェイシードを加えてジャガイモを下茹でし、キャラウェイシードごとザルに上げてオリーブオイルをまぶす
  4. 鉄板に23を並べ、200度に予熱したオーブンで40分焼き上げる
  5. 豚肩ロースをカットし、ジャガイモやフライパンでソテーしたミニトマトとズッキーニを一緒に盛りつけたら完成。肉は下味がしっかりついているため、粒マスタードはお好みで

カレー風味のトマトたっぷりスープ

材料(マグカップ4杯分)
タマネギ1玉 セロリ1/2本 トマト1玉 ガーリック1片 クミン小さじ1 クローブ5粒 カレー粉小さじ1 ガラスープ500cc(ブイヨンでも可) オリーブオイル適量 イタリアンハーブミックス小さじ1 小さじ1/2 ブラックペッパー少々 カイエンペッパーお好み
作り方
  1. タマネギ・セロリ・ガーリックをみじん切りにする
  2. 鍋にオリーブオイルをひき、クミン・クローブ・ガーリックを中火で炒める
  3. スパイスの香りがしてきたらタマネギ・セロリ・塩を加え、タマネギが透明になるまで炒める
  4. 湯剥きしたトマトをひとくち大にカットして鍋に加え、軽く混ぜてからカレー粉を投入
  5. 鍋にガラスープを注ぎ、アクが出てきたら丁寧に取り除く
  6. イタリアンハーブミックス・塩・ブラックペッパーで味を整え、お好みでカイエンペッパーを振りかけたら出来あがり

チャイのムースとアッサムティーゼリーの二層仕立て

材料(グラス2杯分)
チャイのムース
チャイ150cc 生クリーム100cc ゼラチン5g ココナッツシュガー大さじ1
アッサムティーのゼリー
アッサムティー250cc ゼラチン5g ココナッツシュガー大さじ1
※ココナッツシュガーはグラニュー糖でもOK。
代用する際は少し控えめに
作り方
  1. 茶葉を取り出して濾したアッサムティーを鍋に入れ、ゼラチンとココナッツシュガーを加えて火にかけながら混ぜ合わせる
  2. ゼラチンが溶け出したら火を止め、粗熱が取れてからグラスに流し入れて冷蔵庫で約1時間冷やし固める
  3. 予めココナッツシュガーを加えたチャイとゼラチンをボールに入れ、ボールの底を氷水で冷やしつつ少しドロっとするまでかき混ぜる
  4. 角が立たない位の6分立てに泡立てた生クリームと3を混ぜ合わせ、2のグラスにゼリーの上から二層になるように流し入れる
  5. 再び冷蔵庫に入れて約1時間冷やし固め、お好みのシロップやハーブなどで飾りつけ
今回使った飾りはミントとハーブ入りクラッカー、アガベシロップ!

子どもも楽しめるノンアルコールのサングリア

材料(1リットル分)
スターアニス2個 シナモン3本 クローブ5粒 カルダモン
※上記はすべてホールスパイス
5粒
グレープフルーツジュース1L ココナッツシュガーお好み レモン果汁お好み
飾り用(分量はお好み)
オレンジ ミント
作り方
  1. 飾り用を除く全材料を鍋に入れて火にかける
  2. 沸騰すると香りが飛んでしまうため、沸騰の直前で火から下ろす
  3. 常温程度まで冷めたら容器に移し、冷蔵庫で冷やす
  4. グラスに注ぎ、使ったホールスパイスやオレンジ、ミントで飾りつけ。冷蔵庫で約1週間持つので、炭酸水で割るなどのアレンジをして楽しむのもアリ

スパイスが買えるお店

TAKECO 1982

 ☎ 0942-39-8600
[所]久留米市通町102-10
[営]11:00~18:00(OS17:00)
[休]不定
[P]要問合せ

監修

TAKECO 1982 内田 享子さん

スパイス料理研究家・武子先生のスパイス専門店で、レッスンのアシスタントや調理を担当。店内には、家庭料理で使いやすい約25種のスパイスと人気のオリジナルブレンド商品が並ぶ。活用法を教えてくれるので、初心者も安心だ。また、こだわり抜いたカレーが味わえるランチや、毎回テーマが変わる月1のオープンマルシェも見逃せない。