MONTHLY FEATURES 今月の特集
旬の新蕎麦が、断然旨い!
様々な食物が実りを迎える秋は、蕎麦の実の収穫時期でもあり、新蕎麦が美味しく頂ける。
朝倉市の山間にも貴重な国産蕎麦を生産する「そばの里」がある。
蕎麦栽培にかける地域の人々の思いがこもったブランド蕎麦とは?
古くから日本人に根付く蕎麦愛
日本人の食文化の代表的な食べ物でもある蕎麦。約9000年以上前の縄文時代から栽培されていたといわれるほどの歴史を誇る。痩せた土地や暑さ寒さにも強く、短期間で収穫できることが長く栽培が行われている理由のひとつ。麺料理として食べられるようになったのは江戸時代。江戸初期までは「蕎麦がき」が主流だったが、蕎麦のつなぎとして小麦粉が使われるようになると、麺状にして提供されるようになり、手早く食べることのできる蕎麦は江戸中で人気に火がつき、現在に繋がる蕎麦文化のきっかけに。
蕎麦にも旬がある!?新蕎麦は秋が美味しい
そんな途方もない歴史を経てきた蕎麦だが、実は旬があるのをご存知だろうか? 蕎麦が美味しい季節を迎えるのは夏と秋。この時期に収穫されるものが「夏新」と「秋新」と呼ばれる新蕎麦だ。夏に種をまき、10~11月頃に実が収穫される秋新は、夏新よりも風味が良く、特に格別といわれる。蕎麦は一般的に昼夜の寒暖差が大きいと熟成され風味も芳醇になりやすい。秋の気候はまさに蕎麦が育つ環境にうってつけ。麺の色も艶やかで味も申し分なく、蕎麦本来の魅力を存分に味わうならこの時期を逃す手はない。
蕎麦の魅力は味だけに留まらずその栄養効果にも注目したいところ。ルチンという抗酸化作用のある成分や、食物繊維、タンパク質など栄養も豊富だ。蕎麦湯までも飲まれるようになったのは、栄養を余すことなく摂るための習慣から始まったという一説もある。近年のヘルシー志向の影響もあり、蕎麦の需要は少しずつ高まっている。
豪雨被害に負けず被災地で育つ国産蕎麦
蕎麦の産地としては北海道が有名だが、実はほとんどが輸入に頼っていることを知らない人も多いはず。面積当たりの収穫量が少なく、土地も狭い日本では蕎麦栽培を行う農家が少ないのが現状だ。そんな貴重な国産蕎麦の栽培に取り組んでいるのが朝倉市杷木にある松末地区。九州北部豪雨で大きな被害を受けた地区のひとつだが、「そばの里」としてのブランド化を目指し、蕎麦栽培が行われている。「松末そば」と名付けられた蕎麦は松末地区の活性化のため、乾麺・蕎麦の実・そば粉に加え、クッキーやかりんとうなどの加工品としても販売され全国各地から注文が入る。
豪雨被害後は被災して傷ついた人々の心を癒す復興のシンボルとしてその役割を担い、秋に見頃を迎える白い小さな蕎麦の花を見に訪れる人の姿も。地区の再生を託された蕎麦栽培に、困難に直面しながらも挑戦する人たちの姿があった。
松末地域コミュニティ協議会
局長 日隈 繁夫さん
地域活性化のための様々な取り組みを行う[松末地域コミュニティ協議会]の活動の一環として、自身も松末地区で蕎麦を栽培。
また、蕎麦商品の販売なども手掛けている。
災害の爪痕が今も残る松末地区
毎年、地域の希望になるような白い花を一面に咲かせたい……そんな願いが込められた蕎麦畑。九州北部豪雨から2年が経った現在も、復旧作業が続けられているのどかな山間部にある杷木松末地区。災害当時、住宅倒壊や土砂の流出、農地の壊滅など被害は甚大で、住民の生活は一変したが、前を向くためにも歩みを続ける必要があった。そんな人々にとって力となっているのが「松末そば」だ。
国産蕎麦の栽培で地域活性化を
松末地区は朝倉市の中でも特に小さな集落で、少子高齢化や農地の後継者不足など集落の基盤は揺らいでいた。平成24年に過疎集落に対する国からの支援の話が持ち上がり、地域活性化の起爆剤になるような名物が何かできないかと様々なアイデアが出された。蕎麦栽培を経験した住民がいたこともあり、遊休・荒廃農地の有効活用の手段として痩せた土地でも栽培できる蕎麦に着目。
「松末に新風を起こそう」と集まったのは約30名。「そばの里」にするための地域活性化プロジェクトは、蕎麦の栽培だけでなく、蕎麦打ち体験や農業体験を通して都市部との交流や人の流れを生み出すことを目標に掲げ、平成25年に約1~1.5haの畑に蕎麦の種をまき、栽培をスタート。
「大きな面積での栽培となると思い通りにはいかなかった。蕎麦は水分を嫌うので、特に天候に左右されます。雨が多いと量が採れなかったです」と松末地域コミュニティ協議会の日隈さん。試行錯誤しながらようやく道筋が見えてきた矢先、九州北部豪雨が地区を襲った。
蕎麦栽培が復興への足がかりに
日隈さんは災害当時を振り返り「再生は難しいと感じた住民がほとんどでした。家も流され、道路などライフラインも絶たれた。目の前の現実に打ちのめされていて、正直、蕎麦栽培どころではなかったです」。しかし、驚くことに被災からわずか2ヶ月後には畑に種をまいた。「水路がダメになっても農地があれば蕎麦なら栽培できる」と気持ちを奮い立たせた。家もなくなり稲も育てられなくなったけど、蕎麦の栽培がある。住民が前向きに生きるための糧になり、その年も被災地に変わらず蕎麦の花が咲いた。
「量は少なかったんですが、そば粉や蕎麦の実を販売しました。全国各地から復興を願った手紙と共に、蕎麦を購入したいという声がたくさん届き、あっという間に完売しました。本当にありがたかった。松末を知っていただき、復興に繋がる勇気をもらいました」。
有機栽培で育つ風味豊かな松末そば
化学肥料や農薬など一切使わず、鶏糞を利用した有機栽培で育てるこだわりの松末そば。夏と秋に収穫する蕎麦が主流だが、春にも栽培しやすい品種「春のいぶき」を使い、春と秋に収穫している。福岡県産の蕎麦の栽培はとても珍しく、希少価値も高いという。
「蕎麦の味には自信があります。平地で栽培するよりも、山間部で栽培した方が寒暖の差が激しいことで蕎麦の風味も良くなります。松末地区は蕎麦栽培に適した土地ですよ」。
今後の目標は農地再生の整備が進み、担い手を増やすことと日隈さんは語る。「何年先になるかはわかりませんが、先祖から受け継いできた農地を有効活用できる仕組みを作ること。そのためにも松末そばにかかる期待も大きい。そばの里をPRし、都市部との交流を続けていきたい」。今年も白い花が、復興の願いと共に咲く。花言葉には〝あなたを救う〟とある。誠実に努力を重ねる住民の助けに、松末そばがきっとなる。
12月には蕎麦打ち体験を開催
松末地区では毎年12月に、松末そばの魅力を広く県内に発信し、都市部の人々との交流を目的とした蕎麦打ち体験を実施している。蕎麦打ちに必要な本格的な調理器具を使って、生地を打って、切って、茹でるなど蕎麦作りの作業工程を気軽に楽しめる人気イベント。上手に打つためのコツを教えてもらえるのも嬉しいところ。最後は自分で打った蕎麦を試食できるので、喜びもまたひとしお。家族はもちろん一人での参加も可能。
- EVENT
- 日程/12月中旬予定要予約
定員/30名程度
※詳細は問い合わせ
会場/らくゆう館
(朝倉市杷木地域生涯学習センター)
住所/朝倉市杷木池田483-1
予約・問い合わせ
松末地域コミュニティ協議会
☎0946-62-1012
無農薬にこだわり、愛情いっぱいに育てられた松末そばは、
[道の駅原鶴ファームステーション バサロ]で買うことができる。
手作りの加工品の販売にも力を入れているので要チェック。
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有機栽培で育てられたそば粉50%、ラー麦を50%配合し、風味を損なわないように低温乾燥して作られた「干しそば(320円)」。大きめの鍋で麺を泳がせるように茹で上げると◎。蕎麦の豊かな風味とのどごしを存分に楽しんでみて。
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収穫された状態の殻付きの蕎麦の実「玄そば」をそのまま製粉した「そば粉(560円)」。挽き立ての生きた香りをぎゅっと1袋に閉じ込めた自慢の商品。手打ち蕎麦だけでなく、蕎麦クレープ、ガレットなどにもおすすめ。
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そば粉を使用し、松末の地域グループが一つひとつ手作りで仕上げる「そばかりんとう(200円)」。油っこくなくほんのりとした甘みと飽きのこない蕎麦の素朴な味わいを堪能できる。子どもから大人まで幅広い層に人気。
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松末産のそば粉40%を生地に練りこんで香ばしく丁寧に焼き上げた「そばくっきー(250円)」。口に入れるとサクっとした食感と、ほのかに香る蕎麦の風味がクセになるおやつ。プレーン・ココア・抹茶の3種入り。
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スーパーフードとしても注目の「そばの実(500円)」は、ビタミンB2や食物繊維が豊富で、脂肪の吸収を抑えるレジスタントプロテインという成分も含まれる。プチプチとした食感が魅力で、スープやヨーグルトに混ぜてもOK。
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【そばの実ごはん】
そばの実は健康志向の高まりで、今密かなブームに。実は簡単に調理できる食材。お米を炊く時に、そばの実をお好みの分量入れて一緒に炊くだけで完成(目安は1合に約大さじ1杯)。香ばしくなるまで乾煎りしたそばの実を、雑炊に混ぜるのもおすすめの食べ方。
道の駅原鶴ファームステーション バサロ
☎ 0946-63-3888
[所] 朝倉市杷木久喜宮1665-1
[営] 8:30~17:30
[休] 年末年始
美味なるジャガイモとそば粉のニョッキグラタン
- 材料(4人分)
- ジャガイモ(メークイン)400g 卵1個 パルメザンチーズ45g そば粉120g ホワイトソース(市販のものでOK)500g 色味の良い野菜適量 塩こしょう少々 ピザ用チーズ50g パン粉お好み パセリのみじん切りお好み
- 作り方
- ❶鍋に乱切りにしたジャガイモと塩を入れて軟らかくなるまで煮る
- ❷水気を切り、再び火にかけ、白っぽくなるまで水分を飛ばしたものを裏ごしする
- ❸❷に卵・パルメザンチーズ・そば粉を入れ、塩こしょうで味を調え、こねないようにさっくりと混ぜ合わせる
- ❹好みの大きさに成型し、塩の入ったたっぷりのお湯で浮いてくるまで茹でる
- ❺別鍋でホワイトソースを沸かし、下茹でした野菜を加えて、塩こしょうで味を調える
- ❻❹❺をグラタン鍋(写真ではフライパンを使用)等にうつして、ピザ用チーズ・パン粉を振って、トースターできつね色になるまで焼く。仕上げにパセリを振ったら完成
そば粉のティラミスに、そば茶を添えて
- 材料(4人分)
- ビスキュイ生地 A 卵黄3個 グラニュー糖50g B 卵白3個 グラニュー糖40g
そば粉40g 薄力粉50g
ティラミス C 卵黄3個 グラニュー糖50g
マスカルポーネ250g 生クリーム(7分立てしておく)125g ゼラチン(ふやかしておく)5g 濃い目に入れたそば茶30㏄と少量
- 作り方
- ❶Aをボールに入れて白っぽくもったりするまですり混ぜる
- ❷別のボールにBを入れしっかりとしたメレンゲを作る(グラニュー糖は3回に分けて加える)
- ❸❶に❷を加え、ゴムベラでさっくり切るように混ぜ合わせ、ふるったそば粉と薄力粉を加え、同じように混ぜる
- ❹❸を絞り袋に入れ、クッキングシートに絞り、180℃に予熱したオーブンで約12分焼く
- ❺Cをボールで白っぽくなるまですり混ぜる。マスカルポーネを加えて混ぜ、さらに生クリームを加え、ゼラチンをそば茶30㏄で溶かしたものと混ぜ合わせる
- ❻型に❹を薄く切ったものを敷き、そば茶を少量染み込ませる。❺を半分流し入れ表面をならす。同様の工程をもう一度行い、冷蔵庫で冷やし固めたら完成
リストランテSAYA~究極のパスタ~
オーナーシェフ
塩川 広司さん
福岡・東京のホテルでフレンチを学んだ後、25歳で単身渡伊し、ミシュラン2つ星のイタリアンレストランで修業。帰国後[リストランテSAYA]を開業し、10月で12周年を迎える。
リストランテ SAYA ~究極のパスタ~
☎ 0942-35-5628
[所]久留米市東櫛原町421-1
[営]11:30~15:00(OS14:00) 18:00〜22:00(OS20:00)
[休]不定
[P]有