MONTHLY FEATURES 今月の特集

味噌と暮らす

味噌と暮らす

その昔、味噌は栄養価が高い贅沢な食材として重宝された。
味噌を食べていればめったに医者にかからないで済むことから「味噌の医者ごろし」なんてことわざもあるほど。
筑後生まれのちょっと甘めの味噌にぎゅっと詰まった大豆と発酵のパワー、丸ごといただこう。

意外に長い、味噌の歴史

中国にルーツをもつ味噌は、奈良時代に貿易の商品として日本に入ってきた。平安時代に入ると味噌は高級官僚の給料として支給されるほど価値のあるものとなり、庶民はなかなか口にすることができなかったようだ。大豆の栽培が盛んになった室町時代以降、味噌は農家で手作りされるようになって庶民の味として定着。戦国時代には戦にでる兵士に栄養のある味噌をしっかり食べさせようと、大名たちは知恵を絞ったそうだ。
味噌の原料は昔も今も、大豆・麹・塩の3つのみ。麹とは蒸したり茹でたりした米や麦などに種麹を付けて繁殖させたもので、大豆を発酵させるためには不可欠な原材料だ。麹の種類や使用量、塩の量で味噌の味や香りが変わってくる。明治以前は、地元で収穫された素材を使って農家や麹屋が麹を作り、それを分けてもらって台所の一角で手作りすることが多かった。温度管理などできない時代でもうまく発酵するよう、その土地ごとの気候に合わせた作り方が広まって、各地の地域性が生まれたようだ。

筑後の味噌が甘いわけ

筑後の味噌は、他の地域の味噌に比べて塩分が少な目で、麹歩合(大豆に対する麹の比率)が高いのが特徴。麹に含まれる酵素が大豆のデンプンを糖に、タンパク質をアミノ酸に分解することで、塩分がまろやかな甘味のある味噌になる。温暖な気候のおかげで短い期間で十分に熟成できるため、色は比較的薄いものが多い。逆に、1年以上寝かせた熟成期間の長いものがいわゆる赤味噌。寒い地域で親しまれているものだ。
全国的には〝筑後といえば甘めの麦味噌〟という認識があるが、これは九州で豊富に麦が栽培されていたことに由来している。古くは米味噌も作られてきたが、米は不足する時代もあったため、一般家庭では安価な麦が使われたのだろう。
この定説に反して、現在店頭で見かける味噌の多くは「合わせ味噌」だ。一般的に合わせ味噌というとできあがった米・麦・豆の味噌のうち複数を混ぜ合わせたものを指すが、筑後で出回っている合わせ味噌は、米と麦混合の麹で作った「合わせ麹味噌」。米味噌がもつ上品な甘味と麦味噌独特の素朴な風味のバランスが良く、料理にも使いやすい。
昔から日本食に欠かせない味噌だが、大豆の栄養素を丸ごと含むだけでなく、発酵過程でできる栄養素も豊富。今も生活習慣病予防効果や美肌効果などもある、健康食品として注目されている。

味噌は主に4種

米味噌

米麹を使った味噌。
全国的に消費量がもっとも多い。

麦味噌

大麦や裸麦
(大麦の仲間で皮が剥けやすい)の
麦麹を使った味噌。

豆味噌

大豆からできる豆麹を使った味噌。
東海地方に多い。

合わせ味噌

数種の味噌を合わせた味噌。
または数種の麹を使った味噌。

筑後の風土時間味噌を育てる。
それを人は導き、見守る。

味噌づくりの過程で主役となるのは、なんといっても麹。
筑後の温暖な気候と豊かな水、そして時間が上質な麹をつくり、麹が大豆を味噌にする。
発酵という工程でしか出せない旨味はこうして生まれる。

麹づくり

麹の原料となる米と麦をそれぞれ蒸したり茹でたりして柔らかくし、粉末の種麹を混ぜ込んで味噌づくりの要となる麹をつくる。均一になるよう数回混ぜながら、麹菌が活発に活動しやすい温度30~35℃、湿度ほぼ100%の環境を3日間ほど保つと、菌糸がしっかり伸びて米麹・麦麹ができる。蔵によっては、できた2種の麹を混ぜる場合もあれば、種麹を混ぜる前の段階で米と麦を混ぜる場合も。

発酵

原料の大豆をホクホクになるまで蒸し、麹と塩を混ぜる。麹と塩の割合が肝心で、大豆(乾燥状態)10㎏に対して麹は13㎏~20㎏(つまり麹歩合が13歩~20歩)、塩分濃度は低めで10%程。麹の味が強く残るから甘口の味噌になる。(ちなみに辛口味噌は麹歩合が5歩~10歩、塩分13%前後だ)。混ぜ合わせた後は樽に移して25~35℃の熱で発酵を促し、温度が上がりすぎないよう1~3ヶ月間見守る。

熟成

発酵後、18℃前後を保つ熟成蔵へ。この段階までくると人が手を加えるべきことは、ほとんどない。麹由来の酵素と、蔵に永年住みつく自然由来の酵母菌・乳酸菌がじっくりと熟成を進めてくれる。商品によって熟成期間は異なるが、おおむね1~6ヶ月。気温や湿度によって熟成の進み方も変化するので、様子を見ながら育てていく感覚。徐々に塩分の角が取れ、まろやかな味わい、奥深い香りが醸成される。

意外と知らない味噌の使いこなし方

File1

複数の味噌を混ぜると…
奇跡の味噌ができるかも?!

米味噌と豆味噌、買ったばかりの味噌と余っていた味噌など、2つ以上の味噌を混ぜてみると味に深みがでるのでおすすめ。今までにない楽しみ方もできるかも。初めて買った味噌が好みの味じゃなかった、なんて時にぜひ試してみて。

File2

自分で味噌を作るときは、
寒い時期がおすすめ

味噌は家庭でも作ることができ、自分で選んだ素材を使えば旨さも格別。必要な材料をセットした「手前味噌セット」などを活用するのもアリ。発酵は風通しの良い場所であれば問題がないので、涼しい時期に仕込むのおすすめだが、基本的には年中OK。3ヶ月もあればオリジナル味噌が味わえるかも。

File3

味噌を長期保存したいときは
「密閉」&「冷凍」

味噌はもともと保存食なので、パッケージに記載された賞味期限を超えたからといってもすぐに捨てないで。味噌本来のいい香りがしている場合は、むしろ熟成が進んで美味しく変化しているかも? 味を変化させたくない場合はラップで密閉して冷蔵庫で保管するか、もっと長期保存するなら冷凍庫へ。

File4

塩分が気になっていても、
味噌は食べてOK

高血圧になるかも…と塩分を気にして味噌を避ける必要はナシ。味噌の塩分はカレーやラーメンに比べるとごく少量で、ある実験でも味噌が血圧上昇に影響しないことは実証済! それでも気になる場合は、ワカメやほうれん草などカリウムを含む塩分の吸収を防ぐ食材との組み合わせがおすすめ。


お湯をかけるだけの即席味噌汁 味噌玉お湯をかけるだけの即席味噌汁 味噌玉

お湯を注ぐだけですぐ味わえるインスタント味噌汁・味噌玉。
すぐれたタンパク源である味噌を手軽に取れるようにと考えられたもので、
日本初の味噌蔵を作った戦国武将・伊達政宗は、味噌を丸めて固めた味噌玉を竹の皮で包み、兵士たちに持たせたとか。
好みの具材を混ぜ合わせれば、想像以上の美味しさに驚くかも。

作り方
  1. ボウルで味噌と粉末ダシをよく混ぜ合わせる。
  2. 味噌玉1つ分(約16g・およそ大さじ1)の味噌を取り分けて小さな容器に入れる。
  3. 好みの具材はそれぞれ細かく刻んでおき、ひとつまみずつ味噌に混ぜ込む。
  4. 手で丸めれば、できあがり。
材料(5杯分)
好みの味噌80g 粉末ダシ大さじ1 (煮干し・かつお・昆布等、好みのものでOK) 好みの具材適量

乾物、漬物、薬味など水分を多く含まない食材がおすすめ。水分が多く冷凍に向かない豆腐や、火が通らない根菜はNG

〈 賞味期限 〉
冷蔵庫ラップでくるんだ状態で1週間 冷凍庫1ヶ月 (冷凍した場合でもお湯をかけるだけでOK)

[cocomi流 味噌玉レシピ]

A

クラッシュアーモンドの
豆乳味噌汁

ベーコン(電子レンジで加熱しておく)
乾燥万能ねぎ パルメザンチーズ
クラッシュアーモンド

水と豆乳を1:1で混ぜて温めたもので溶く

B

桜えびの
香ばし味噌汁

桜えび 乾燥わかめ
油揚げ 乾燥万能ねぎ

C

唐辛子の
ピリピリ辛味噌汁

いりごま 乾燥わかめ 乾燥万能ねぎ
一味唐辛子

D

スパイシーカレー
味噌汁

とろけるチーズ スイートコーン
刻み玉ねぎ カレー粉

E

磯部揚げ風
味噌汁

ちくわ 揚げ玉 いりごま
青のり

F

イタリア〜ンな
味噌汁

モッツァレラチーズ おろしニンニク
刻み玉ねぎ ドライトマト(トッピング)

G

とろろこんぶの
とろ〜り味噌汁

ひとくち高野豆腐 乾燥万能ねぎ
とろろこんぶ

の食材は具材を混ぜ丸めた後全体にまぶす

筑後の
美味しい味噌
食べよう!

サクラみそ食品

地元で愛され続ける
“元祖”合わせ麹味噌

さくら合わせみそ

540

原材料/
米、大豆、大麦、食塩、ぶどう糖、酒精、調味料等
内容量/
800g

大正2年に久留米市にて創業し、100年以上に渡り味噌を造り続け、地域に親しまれる[サクラ味噌食品]。仕込みの段階から米と麦の麹を合わせる「合わせ麹製法」を確立。桜があしらわれたこの味噌は、米味噌と麦味噌のバランスが良くマイルドな味わいで、どんな料理にも合う。

☎︎ 0120-340-390 [所]久留米市梅満町高海1638-4 [営]9:00~17:00 [休]土日祝日 [P]有

おみその学校 カネダイ

素材の味と酵母が生きた
自然を味わう味噌

ミニ合わせみそ

1,230

原材料/
大麦、大豆、米、食塩
内容量/
1.5㎏
要冷蔵

東峰村で170年麹を作り続ける[カネダイ]は“心と身体を豊かにする味噌”が理念。国産原料に釈迦岳や英彦山の伏流水を使用した生味噌には酵母が生きており、保存中でも熟成が進むから、味の変化が楽しめる。塩分は控えめながら、出汁を取らなくても十分美味しい味噌汁ができるほど風味が豊か。

☎︎ 0120-303-039 [所]朝倉郡東峰村宝珠山7 [営]8:00~18:00 [休]年末年始、お盆 [P]有

鶴味噌醸造

食べた人をとりこにする
奥深いまろやかな旨味

あわせみそ巾着

540

原材料/
米、裸麦、大豆、食塩、たん白加水分解物、酒精等
内容量/
1㎏

水郷・柳川にて創業以来150年以上味噌を作り続けている[鶴味噌]。柳川城外堀に面した並倉は創業当時から変わらぬ佇まいで、国指定有形文化財でもある。米麹と麦麹を同時に作ってから混ぜる製法の合わせ麹味噌は、まろやかな甘味で口当たりがよく、まさに故郷の味。

☎︎ 0120-37-2166 [所]柳川市三橋町江曲216 [営]9:00~17:00 [休]土日祝日 [P]有

マルヱ醤油

米と麦が織りなす
絶妙な旨味に心満たされる

ふるさとの朝 合わせこうじ

518円(標準小売価格)

原材料/
大豆、米、大麦、食塩、酒精、調味料等
内容量/
700g

本社をみやまに構え、味噌を朝倉市で醸造する[マルヱ醤油]は、今月で創業からちょうど100年を迎える。国産の厳選原料にこだわり、米由来の甘味、麦由来の旨味など、それぞれの持ち味を生かす独自配合で作った合わせ麹味噌。半世紀近く変わることなく地元で愛されるベストセラー。

☎︎ 0120-313-201 [所]みやま市高田町江浦町189 [営]9:00~17:00 [休]土日祝日

不二家

地元の名水を使い
手間ひまをかけ育てた味噌

手造り味噌 合わせ

590円(通販価格)

原材料/
米味噌(米、大豆、食塩)、麦味噌(裸麦、大豆、食塩)、酒精等
内容量/
1㎏

明治29年の創業以来、五代に渡り受け継がれてきた伝統的製法で味噌を作る[不二家]。湧き水や有名鉱泉がある筑後の良質な水で米や大豆を丁寧に洗うことで、素材の味を活かしている。米と麦を7対4の割合で配合した合わせ味噌は、クセが少なく米らしいまろやかな甘味が特徴。

☎︎ 0942-53-3519 [所]筑後市久恵1137-1 [営]8:00~17:00 [休]日曜、祝日 [P]有