MONTHLY FEATURES 今月の特集
筑後が世界に誇る、スゴいもの!
ものづくり文化が息づく筑後。この地方には地域に留まらず、県外、そして世界に認められるすごいものがたくさんあります。改めて手仕事の良さに触れてみませんか?
伝統と現代のコラボによる
久留米絣新時代
世界が注目する筑後のものづくり文化
筑後地方はものづくり文化が根付いた地域。この筑後に世界へ誇る企業があるのは、誰もが知るところだろう。明治時代、足袋やゴム靴などの製造が盛んで「ゴムの街」ともいわれた久留米から世界的企業に発展したのが、タイヤ業界で2008年から世界シェアNO.1を継続する[ブリヂストン]。そして近年、オシャレかつ機能的な靴で圧倒的な人気を誇るシューズブランド[ムーンスター]。一足一足丁寧に作り上げる足袋製造の精神が、現代まで受け継がれ、今や「MADE IN KURUME」の代名詞として確固たる地位を築いている。どちらも時代に合わせた変化と進化を続けた結果、日本を代表する企業に成長を遂げている。
脈々と受け継がれる伝統工芸の数々も筑後が誇るべき文化だ。200年以上の歴史を持つ久留米絣に、八女の提灯、大川の木工、朝倉の小石原焼など地域を代表する魅力ある手仕事が溢れている。その一方、伝統を守ることは綺麗事では成り立たない現実も。職人の高齢化や後継者問題など課題も山積みだ。そんな伝統文化を守るべく技術を磨く職人や、アイデア商品を生み出す仕掛け人、グローバルに展開する企業まで、筑後にはまだまだ知られていない素晴らしいものづくりに携わる人々がいる。彼らの情熱に触れると、自分の街をもっと好きになるはずだ。
久留米絣で世界から人が集まる街へ
久留米市の問屋街(あきない通り)に、創業101年目を迎えた[西原糸店]がある。久留米絣を使った様々なアイテムが揃い、中でも久留米絣を使って仕立てられたスーツやワンピースに目を奪われる。久留米絣独特の心地良い肌触りや洗練された色合いが美しく、”和と洋“、”伝統と現代“を融合させた革新的な商品だ。「若い世代にも久留米絣の魅力を発信したい」と5代目の西原さん。新商品の開発と並行し、大学生とファッションショーを行うなど活動も多岐に渡る。「久留米絣で久留米の知名度を県外、そして世界の人に広げていくことが目標です」。そのために業種を越えた人の繋がりとブランディングが必要になると語る。「オール久留米でチャレンジすれば、世界中の人が集まる街にきっとなるはず。久留米絣には、久留米の魅力を発信する大きな力があると信じています」。西原さんの挑戦はまだ始まったばかり。
西原糸店
電話番号 | 0942-34-1861 |
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住所 | 久留米市中央町35-1 |
営業時間 | 10:00~19:00 |
店休日 | 火曜、祝日 |
駐車場 | 有 |
伝統を守るために磨き続ける
線香花火の技術
希少な国産線香花火を“良いカタチ”で後世に
夏の風物詩と言えば、花火を思い浮かべる人も多いかもしれない。夜空に打ち上がる大輪の花もいいけれど、遊び心いっぱいの玩具花火も何とも乙なものだ。その中でも、繊細で儚げな姿を見せる線香花火は日本ならではの伝統美ではないだろうか。
みやま市にある[筒井時正玩具花火製造所]は、今では希少となった国産の線香花火を製造している。「花火に国産や外国産があるの?」と思う方も少なくないかもしれない。そう、実は玩具花火の大半を占めるのは中国産。中でも線香花火はその割合が99・8%と、国産のものはほとんどない。玩具花火はセット売りされることが多く、こだわって作られた国産の花火が入っていても、その他大勢の一つとして見過ごされてしまう。
「すぐに消えたり、嫌な匂いがしたり。良いものがないから花火で遊ばなくなる。この状況が続くことは、花火業界の衰退に繋がります。私たちは一目で国産と分かるものを作って、花火の魅力を知ってもらいたいという思いで、線香花火の製造を始めました」と教えてくれたのは3代目を継ぐ筒井良太さん。良太さんはおよそ20年前、当時国内で唯一の線香花火製造所が廃業することをきっかけに、そこに弟子入りして修行を積み、線香花火の技術を全て受け継いだ。
地元の素材にこだわり一つひとつ手作業で作る
現在、国内で線香花火を製造するのは3社。[筒井時正玩具花火製造所]では、それらとの差別化を図るため”地元の素材“にこだわった。火薬は宮崎産の松煙、紙は八女の手すき和紙を草木染めしたもの。これらを使い、職人が1本1本手作業で作り上げる。桐箱のセットに入るロウソク立ては、大川家具の職人が作ったものだ。「伝統工芸はどこも衰退傾向にあると聞いています。私たちの線香花火に地元の素材を使うことで、同じ九州・筑後で頑張っている伝統工芸品のことを知ってもらえるお手伝いになれば」と良太さんの奥さん、今日子さんが教えてくれた。
線香花火は、点火すると火の玉からパチパチと力強い火花が飛び出し、やがて繊細な花が散って最後は再び火の玉となる。まるでそれは誕生から老いを迎える人の一生のよう。人生の喜びや悲しみと照らし合わせながら花火を楽しんでほしい。
筒井時正玩具花火製造所(株)
電話番号 | 0944-67-0764 |
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住所 | みやま市高田町竹飯1950-1 |
営業時間 | 11:00~18:00(ギャラリー) ※シーズンにより営業時間は異なる |
店休日 | 水曜 |
日本一にも輝いた鯉養殖の
プロフェッショナル
高品質な錦鯉を養殖し、グローバルに展開
国内でトップクラスの鯉の養殖を誇り、95%以上を海外に輸出するなどグローバルに展開する企業がある。鯉に魅せられた尾形社長の物語は高校時代、中学校の恩師から錦鯉の稚魚をもらい飼育したことから始まる。卒業後、新潟で5年間修行し、24歳の時に久留米に戻った。「父の休耕田に鯉を放したのが1972年。その年が創業ですね」。軌道に乗るまで10年。鯉の愛好家が多かった昭和54年頃、市の紹介で土地を購入し、鯉の販売を本格的にスタートさせるも、台風19号の被害で壊滅状態になってしまう。活路を見出すために海外展開を目指すことに決めた。当時、日本の錦鯉の知名度はなく、展示会などでプロモーションを積極的に行い、市場そのものを作り上げていった。現在は、20ヶ国ほどで取り引きされている。「鯉は芸術品。見たことないような鯉を誕生させるのが夢」。その意欲は尽きることがない。
株式会社 尾形養鯉場
電話番号 | 0942-27-2519 |
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住所 | 久留米市安武町武島2712 |
営業時間 | 9:00~17:00 |
店休日 | なし |
駐車場 | 有 |
人、技術、素材、想いを
伝えるアンテナショップ
筑後地方・九州各地の選りすぐり商品の数々
八女市にある筑後地方・九州ものづくりのアンテナショップ[うなぎの寝床]。筑後地方を中心に、九州各地からセレクトされた商品が並ぶ。八女のおひつや久留米絣のもんぺ、うきはのドライフルーツなど生活雑貨から衣料品、食べ物まで取り揃え、日本の伝統美を求めて海外からもお客が足を運ぶ。独自の視点で選ばれた商品からはまるで手仕事の息遣いを感じる。お店のコンセプトは”作り手“と”使い手“を繋ぐ役割を担うこと。「作り手さん本人がお客様に、素材の良さや想いまで届けるのは難しい。その代弁者になりたいと思っています」とスタッフの請関さん。様々な作り手と関わる中で、地域文化を担保するために経済をまわす活動を目指す。その一環として古民家を活用し、企画展の開催や他地域の魅力を学ぶ場を設けている。地道な努力の積み重ねが、地域が誇るものづくりを守る一助になるはずだ。
うなぎの寝床
電話番号 | 0943-22-3699 |
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住所 | 八女市本町267 |
営業時間 | 11:30~18:00 |
店休日 | 火・水曜※祝日は営業 |
駐車場 | 有 |