慌ただしい年末年始を過ごすあなたにとっておきの和菓子をご紹介。
冬休みくらい自分を甘やかしたって罰は当たらないでしょ。
寒さに縮こまった体と心が和菓子のやさしい甘さで解きほぐされて
新しい1年をまた楽しく過ごせますように。

鳥栖にあるに洋菓子店［アンジェココ］の和菓子部門として4年前にオープンした［杏都］。洋菓子店で培った技術に和素材のもつ味わいを掛け合わせ、洋の要素を盛り込んだ創作和菓子で愛される人気店だ。
オープン当初からの店頭に並ぶ和ケーキ「松乃実」は、なんといっても可愛らしい形が目を引く。和菓子らしい形のケーキを作ろう、と考案された松ぼっくりの形は、なんときな粉、胡麻、チョコレートのきめ細かなムースでできていて、とても柔らかく繊細。表面の凹凸や色まで見事に再現されているので、なんだか食べるのがもったいなくなってしまう。
フォークで触れるととても柔らかく繊細で、フワッと滑らかな舌触りが特徴的だ。ムースの中にはチョコレートソースがあり、土台にはしっとりとしたスポンジが。まるで洋菓子のようだが、口に入れるときな粉や胡麻の香ばしさがいきていて、和菓子らしい優しい味わいが堪能できる。なるほど、和風のケーキってこういうことか、と思わずうなずくこと間違いなしだ。

お菓子村 杏都あんと
☎ 0942-85-7780　［所］鳥栖市原古賀町519　［営］10：00～18：00　［休］月曜、第1・3火曜　［P］有

カステラに羊羹を挟んだ「シベリア」は、大正から昭和初期に首都圏を中心にハイカラ菓子として大いに流行した伝統菓子。ジブリ映画『風立ちぬ』のワンシーンで見かけた記憶がある人もいるのでは。実はこれ、発祥や考案者が不明の謎多きお菓子。カステラも羊羹も九州では馴染み深いものなのに、シベリアは九州ではあまり知られていない。
佐賀の老舗［村岡総本舗］が令和版として作り出したこのシベリアは、ただ挟んだものと侮るなかれ。ポルトガル風のバターカステラに自家製粒餡と切り羊羹を重ねた5層構造で、柔らかい食感と甘い香りが口いっぱいに広がる逸品。自慢の羊羹とカステラを至福のシベリアへと見事に昇華させている。写真の四角く小ぶりなシベリアのほか、大きめの「丸シベリア」、長崎の伝統的なカステラと自家製こし餡を使った味わいが異なる「三角シベリア」もあり、それらは要予約。どことなくクラシカルな包みからも、流行していた当時のワクワク感が伝わってくるようだ。

村岡総本舗 鳥栖店
☎ 0942-82-2543　［所］鳥栖市宿町原田1012-5　［営］9：00～18：00　［休］無　［P］有

オープンから2年を迎える［甘味ya-tsu］には、あんみつやぜんざい、おはぎといった素朴な和菓子が揃っている。そのどれもが、北海道産の厳選した小豆を毎日店内でじっくりと炊き上げた自家製の粒餡を主役とした、餡子を美味しく頂くためのもの。まったりと滑らかな舌触りで、重すぎずさっぱりと食べられる餡子が自慢だ。
引き立て役の具材がふんだんに入ったあんみつは、ふわふわの白玉や寒天、キラキラと光る蜜のジュレもすべてが自家製。イチゴの季節ならではの「あまおうのあんみつ」は大粒のあまおうやキウイも入って、盛りだくさん!　さらにホクホクした安納芋とクリームチーズで絶妙な塩味を楽しめる「安納芋とクリームチーズ」、自家製餡子とコーヒーが意外にも好相性の「コーヒーあんみつ」など、バリエーションの豊かさにも驚かされる。無性に和菓子を欲している、というときに最適で至福の一杯、あなたもいかが。

甘味ya-tsuかんみヤーツ
☎ 080-8916-0099　［所］久留米市小頭町5-11 兼重ビル1F-1　［営］11：00～16：00　［休］不定※インスタを確認　［P］近くに有料Pあり

最中のたね（皮）はともすれば餡子を入れるための脇役と思われるかもしれないが、昭和3年創業の［たねよし］のたねを食べればその考えは覆るはず。歯ごたえはパリッ、サクサク、直後にやってくる焼いた餅の香ばしい香りと佐賀県産「ヒヨクモチ」の甘味、そして口どけの良さ。最中の主役はたねの方だったのか、と思えるほどの存在感を発揮している。
その秘密は、餅米は自家製粉し、蒸す、練る、伸ばして切り、焼き上げるという昔ながらの製法を守り、一枚一枚職人が手作りしているから。添えられた餡子も初代から受け継がれた添加物不使用の自家製餡子。食べる直前に餡子をたねに盛りつけることで、焼き立てのようなサクサク食感がいつでも楽しめるのも嬉しい。
普段は店舗としては構えていないため、販売は催事やイベント出店を狙うか、直接工場へ電話して購入して。欲張りに餡子をたっぷり乗せて、たねの美味しさを堪能しよう。

もなか屋 たねよし
☎ 092-926-4019※来店の際は要事前連絡　［所］朝倉郡筑前町二197-3　［営］9：00～17：00　［休］日曜　［P］有

久留米で最も古い歴史をもつ和菓子店［吉金菓子舗］は、地元・久留米の良さを伝える郷土銘菓を作り続けている。明治8年の創業当初からお茶菓子として愛される「いつもじ」や、その後登場した［ブリヂストン］のタイヤをデザインした「タイヤ最中」など、久留米の名物をモチーフにしたものが多く、今は四代目のご主人が変わらぬ味を引き継いでいる。
戦後まもない頃に生まれた「かすり羊羹」は、その名のとおり久留米絣の反物を模した羊羹。自家製のこし餡生地に白餡を散らして絣の紋様に見立てていて、切り分ける毎に模様の見え方が変わるのが楽しい。ねっとりとして重みのある舌触りなのに後味はすっきりとして、申し分のない美味しさはお茶受けにもぴったりだ。しかも包み紙には「井桁紋様」と機織りの道具「杼」、側面にはうずまき模様まで描かれていて、なんとも洒落た和菓子。思わずほっこりしてしまう可愛さをぜひご堪能あれ。

いつもじ本舗 吉金菓子舗よしきんかしほ
☎ 0942-32-5827　［所］久留米市日吉町12-28　［営］9：00～18：00　［休］不定　［P］有

豆を水漬けし、昔ながらの大釜で茹でて、蜜を浸透させ、乾燥させる。合計で7日間近くもかかる甘納豆作りの工程は、一つずつはシンプルなようでいて、すべてに職人の経験と知識を要するもの。水加減、火加減、糖度などどれか一つが微妙に違うだけで、食感が固くなったり、豆の風味を損なってしまったりする。全国の多くの人に愛されている甘納豆を半世紀以上にわたり作り続ける［石橋 甘納豆］ならではの熟練の手仕事が伺える。
大黒花芸豆に香り豊かなきな粉をまぶした「きなこ花豆」は、しっとりとした食感と素朴な甘味がたまらない人気の定番品。「さつまいも」は九州産のさつま芋を大き目の輪切りにしているので食べ応えがあり、さつま芋本来の食感や風味が味わえる季節商品だ。
甘納豆といっても季節限定の商品を含めると常時10種以上もあり、豆の種類も素材も様々なので、いろいろと食べ比べてみるのもおすすめ。

石橋 甘納豆
☎ 0942-32-6665　［所］久留米市本町18-25　［営］9：00～18：00　［休］日曜、祝日　［P］有

可愛い福助のキャラクターが目印の［OTEMAE］。八女産の厳選された抹茶・ほうじ茶を惜しみなく使って作るテイクアウトスイーツやドリンクの専門店だ。
抹茶やほうじ茶のプリンというと珍しいものではないが、ここの和風プリンはお茶の濃さと食感の滑らかさが抜群なのだ。スプーンですくった瞬間はやや固めに感じるが、口に入れるととろけて柔らかくなり、なんとも濃厚でクリーミー。と同時に抹茶やほうじ茶の爽やかな香りが鼻を抜け、お茶の風味とほろ苦さをしっかりと味わうことができる。甘さは控えめで、茶葉の美味しさが全面に出ており、こだわって丁寧に作られていることが伺える。洋菓子であるプリンも、ここまで抹茶・ほうじ茶の香りを際立たせたら和風といっても違和感のない一品。お茶スイーツLoverにはぜひお試しいただきたい。人気で完売することも多いので、最新情報はインスタでチェックを。

OTEMAEオテマエ
☎ 080-8883-8384　［所］久留米市六ツ門町13-21 岡島ハイツ1F右　［営］12：00～18：00※木曜は14：00～　［休］月曜　［P］近くに有料Pあり

茶道で使われるお菓子を中心に、厳選された小豆、砂糖と餅というシンプルな素材を使い、上生菓子、干菓子や一口まんじゅうなどを作っている［和菓子処 みやび］。写真のうち、赤い方はこの時季らしい鮮やかな「紅梅」で、もう片方は正月飾りの定番である「千両」。店主が独学で身に付けたという熟練の技で作られていて、ぽってりと丸みを帯びた姿はなんとも愛らしい。しっとりときめ細かい餡は甘さ控えめ。お茶とともにゆったりと頂きたい味だ。
花鳥風月をモチーフとした上生菓子の美しい姿や色は、季節の移ろいに思いを馳せながら五感を使って味わうもの。ここでも月毎にモチーフが変わるので、その変化を楽しむのもまた粋だ。上生菓子は敷居が高いなんて考えずに、電話で注文すれば1個からでも対応してくれるので、日常の慌ただしさや考え事からしばし解放されて、優雅な美味しさにどっぷりと浸ってみては。

和菓子処 みやび
☎ 0942-32-5834　［所］久留米市本町16-27　［営］10：00～17：00　［休］日曜、祝日　［P］有

明治18年から続く朝倉の老舗菓子店［ハトマメ屋］。創業当初は食糧難の時代にあったため、子どもたちにひもじい思いをさせたくないとの思いで豆菓子を作り、平和を願ってそれを「ハトマメ」と名付けたことが店名の由来だ。今は豆菓子だけでなく、シュークリームやケーキといった洋菓子、饅頭や羊羹などの和菓子も製造している。
いろいろと人気商品はあるが、なかでも焼き立てを販売している「ちーず大福」は見逃せない。佐賀県産の餅米で作った自家製の餅の中にチーズがたっぷり入っていて、甘めの醤油ダレと焼き海苔の風味がたまらない。大き目なのに2つくらいペロリと食べられそうな美味しさだ。店先でそのままワンパクに食べたいところだけど、冷えても餅が柔らかいので、当日中は美味しく頂ける。ありそうでなかった餅とチーズと醤油ダレの組み合わせは、小腹が空いているときなら、この香ばしい誘惑には勝てそうにない。

ハトマメ屋
☎ 0946-52-0036　［所］朝倉市宮野1910-3　［営］9：00～18：00　［休］水曜　［P］有

津福本町の住宅地に佇む［森のわすれもの］は、子どもから大人まで安心して食べられるよう、厳選素材を使用したケーキやクッキーなどの洋菓子をメインとしている。一つひとつに真心が込められた温もりあるお菓子がずらりと並ぶなか、1つだけ和風のオーラを放っているのがこの「玉露まめ」だ。
金色のパッケージを開けると、中には眩しいほどに鮮やかな緑の豆菓子。星野村の上質な玉露、北海道産の大豆、そして砂糖という3つの素材だけで作ったシンプルなお菓子で、茶葉の中でも特に希少で最高級といわれる玉露がとにかくたっぷりと使われている。噛むほどに感じる大豆と砂糖の優しい甘味が玉露らしい旨味と風味を引き立て、一粒、また一粒と口に運んでしまう後を引く味。素材の良さを生かしたい、と考えて辿り着いた「おいしいものはシンプルに」という考え方をそのまま表現しているような、懐かしくも贅沢な味わいだ。

日々のおかし 森のわすれもの
☎ 0942-37-5302　［所］久留米市津福本町1702-63　［営］12：30～18：00　［休］月曜　［P］有