久留米を介護医療のモデル地区に。
堀江 桃子 × 古田 紀久郎
久留米市役所 展望ロビー にて
- いちょうの杜グループ 施設長
堀江 桃子 Momoko Horie - 1974年久留米市生まれ。グループホーム、複合型サービス施設などを運営。その傍ら、久留米市キャラバン・メイト連絡会理事長、久留米市介護福祉サービス事業者協議会役員等を務め、認知症を理解してもらうべく活動する。
- cocomi 発行人
古田 紀久郎 Kikuo Furuta - 1975年久留米市生まれ。豚骨ラーメン大好きcocomi発行人。その他に、クリエイティブディレクターとして数多くの広告物に関わる。通学路となっている会社の前で挨拶し続けた結果、「雷のおっさん」の愛称を獲得した。
認知症を知った日から身を焦がす介護への情熱
22歳の若さで結婚した堀江 桃子氏を待ち受けていたのは、99歳のひいおじいさんと98歳のひいおばあさん。それまで想像だにしなかった認知症高齢者との生活だった。
「まだ認知症が痴呆と呼ばれていた時代。おじいちゃまがね、夜中にいつも『おーい、おーい』って叫ぶの。ただもう恐くて。でも勇気を出してどうされたのかと聞いたら、『時間がわからない』とおっしゃって…」
ひいおじいさんは90歳の時に緑内障で失明していた。光を感じ取れないため、朝なのか夜なのかわからなかったのだ。それを知った堀江氏は、スイッチを押すと時間が音声で流れる時計を買いに走った。すると、夜中の『おーい、おーい』はぴったり止んだという。
「なんだ、ちゃんと耳を傾けて接したら、ちゃんと伝わるじゃん、何もわからない人じゃないじゃんって、その時思ったんです」
むくむくと膨らんだ知識欲から介護を独学で学んだ結果、当時の老人ホームに疑問を持つようになった堀江氏。自身と同様に嫁入りした女性の心が折れていく様子を見て危機感を抱いたことから、自らが理想とする施設の運営に乗り出した。それが[いちょうの杜グループ]である。
だが、彼女の介護にかける想いは、膨らみ続けてはちきれんばかり。施設を飛び出し、辿り着くその先とは。
ひとこと声掛けがあれば
堀江あのね、悲しいかな、久留米市でも今やっぱり認知症の方が亡くなってるんだよね。行方不明で。
古田行方不明で?
堀江そう、徘徊されて。見つかった時はご遺体よ。
古田ああ…。
堀江しかもすぐには見つからないの、5年後とか。だから、その間、家族はどんな想いで待ってるだろうと考えた時に、ちょっとの声掛けがあったならって思ったんです。「あのおばあちゃん、認知症だもんね、ちょっと声を掛けとこう」って。そしたら、行方不明になって亡くなることなかったかもしれない。ねえ?専門職として私に何かできることはないかって。それが平成21年よ。
古田はあはあ、なるほど。
堀江その頃、活動を始めました。「認知症サポーター養成講座」っていう厚労省のやってるプロジェクトで、講師として小学校、中学校、高校、あと一般企業、郵便局、久留米警察署でもお話をしてます。年間70講座くらい。5日間に1回のペース。
古田は~すごい! 全然初心者でわからないけど、この人は認知症だろうか、普通のおばあちゃんなんだろうかって、判断はどうすれば?
堀江判断なんてしなくてよくて、「なんか困ったことがあるんですか」って聞くだけなのよ!
古田ああ、なんかおかしいなと思ったら。そうですね。
堀江まずは「こんにちは」が言えればいいから。子どもたちに言ってます。まずはご挨拶をしようって。
古田僕、昔やってたラグビーがそうで挨拶だけはするようにって。おかげで助かってます。すごく話しやすくなったり、付き合いが増えたり。当たり前やけど、大事ですよね。
堀江すごく大事。ちゃんと一度アイコンタクトをとってね。企業でも講座をもっとやりたい。なぜかと言うと、これから働き手が少なくなるでしょ? だから介護リタイアさせちゃダメ。企業に介護をわかってほしい。ただ休みを増やすのではなく、目的のある休みをとれるように。
古田その上で働き方改革をですね。みんなが認知症を理解するようになると、いろいろ変わることがありそうですね。
堀江認知症高齢者を見守る目が地域にあれば、実は虐待だって、障害だって、子育てだって、全部カバーできると私は思うんです。
「久留米方式」を作る
古田横のつながりがないですよね、最近。地域ぐるみで子育てをせんといかんって、こないだ弁護士の富永さんと話したばかりで(前号参照)。
堀江みんなが少しずつでも顔見知りになれば、地域力は格段に上がる。それで、[いちょうの杜 山川]という事業所では7月にビアガーデンを毎年やってるの。
古田あ、近所向けに?
堀江そう。なんでこれを始めたかというと、特に独居高齢者の男性が、老人会は嫌、食事会も行きたくないって言うのよね。だから、何だったら出てきてくれるかって考えたら…「お酒じゃない!?」って。
古田うんうん、確かに(笑)。
堀江すっごい盛り上がる。金曜とかもう満員。近所の子もおじいちゃんもいろんな方たちが集まって、「あら、あんた来とったとね!」って。
古田いいですね~村祭りみたい。
堀江うちはダーツバーもあって、オリンピックとか何か大会がある時はスポーツバーをやってる。
古田年をとって高齢者の施設に入るって暗いイメージになるじゃないですか。そうじゃなくて、ほんとに生活を楽しんでるってことですよね。
堀江私はもう久留米がよくなればいいとしか思ってないから。で、久留米が介護医療のモデル地区みたいになればよくない!? 「尾道方式」や「富山方式」って全国で注目される地域医療連携システムがあるけど、「久留米方式」を私は作りたい。
古田そうですよね、久留米は医者が多くて医療の町だから。
堀江そうだよ! 聖マリアがあって大学病院があってホスピスもあって、こんな充実した町はないのに。
古田そうですよね、ご飯も美味しいし、水も美味しいし、ほんとねぇ。
堀江伝統もあってさ。久留米にしかないものがいっぱいあるから。こんないい町、他にどこにある!?
古田ふふふふ、間違いない!
オトナのおすすめスポット
久留米市役所 展望ロビー
電話番号 | 0942-30-9059(総務部財産管理課) |
---|---|
住所 | 久留米市城南町15-3-20F |
営業時間 | 8:30〜18:30 |
定休日 | 第3日曜、12/28〜1/3 |
駐車場 | 有 |
いちょうの杜グループ
電話番号 | 0942-41-1822 |
---|---|
住所 | 久留米市山川町326-6 |
駐車場 | 有 |