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株式会社 キャリア・リード 代表取締役 佐藤 有里子 お母さんたちに生きる力を。

お母さんたちに生きる力を。

佐藤 有里子 × 古田 紀久郎

久留米市美術館 にて

株式会社 キャリア・リード 代表取締役
佐藤 有里子 Yuriko Sato
1967年久留米市生まれ。女性の就職支援に努める傍ら、[特定非営利活動法人 わたしと僕の夢][umau.合同会社]を運営。母子家庭の貧困問題に立ち向かうため、学習支援や生活支援などさまざまな活動を展開する。
cocomi 発行人
古田 紀久郎 Kikuo Furuta
1975年久留米市生まれ。豚骨ラーメン大好きcocomi発行人。その他に、クリエイティブディレクターとして数多くの広告物に関わる。面倒見のよかった祖母を見習いたいと、子ども会や地域の施設を細々とサポートしている。

10年間の苦しみを糧にシングルマザーを救いたい

観音様のように柔らかな笑顔で語り始めた佐藤 有里子氏の10年間の結婚生活は壮絶なものだった。身体を壊して入退院を繰り返し、自己肯定感はすっかり失われていたという。 2人の子どもを連れて家を出ると、時給750円のパートを始めた。「ありがとう」の一言が嬉しくて、頼まれないことまでどんどん頑張った。そこで出会ったのが派遣で働きに来ていた自身と同じシングルマザーたち。彼らをサポートする内にその過酷な生活実態を知ることに。
「忘れもしない10月11日、前日にあった子どもの運動会でお金がなくて弁当を作れなかったって相談を受けたんです。私、9日にそのお母さんに仕事を頼めてなかったんですよ。なんで気付いてあげられなかったんだろうって、すごく後悔して…」
それから役員として迎えられた人材派遣会社を経て、家族旅行を夢見て積み立てていたお金を資本金に2002年、女性の就職支援に特化した[有限会社 キャリア・リード]を設立。6坪の小さな敷地で、何の後ろ盾もなくたった一人で始めた事業は困難を極めたものの、頼ってくれる母親たちのため、まさに孤軍奮闘。一人また一人と彼女の想いに賛同する協力者が増え、会社は軌道に乗った。そして、自身がやりたかったことができる力を得た今も、佐藤氏は更なる課題を前に奮闘している。

子どもたちに罪はない

子どもたちに食事を用意。未使用の食品や服等の提供を求む

古田僕は佐藤さんのお話を聞くまで、シングルマザーのご家庭の実態がそこまでひどいって知らなかったんですよ。楽ではないだろうけど、普通に生活しているくらいのイメージだったから。

佐藤今、全国で6人に1人の子どもが貧困と言われていて、久留米では4人に1人。日本の貧困の子どもたちって見た目ではわからないんですよ。とりあえずきれいな格好をしているから。でも自宅に行くと、ほんとにショックを受けるんです。

古田そうなんですね…。

佐藤いろんな問題が重なってるんですけどね。一つはやっぱり何というかな、スキルがないお母さんたちがたくさん稼ぐことは難しくて。どうしてあげたらいいのかなって、お母さんたちと話し合ったら、子どもが受験生なのに塾にも行かせられないって。それで社内で勉強を教え始めたんですよ。そしたら、子どもたちが思った以上にお腹が減っていて、今度はご飯を作り始めて。

古田みんなで勉強してご飯を食べて、寺子屋みたいですね。

佐藤それが「特定非営利活動法人 わたしと僕の夢」の活動なんですけど、勉強だけじゃなくて遊びと食事も大切な経験なんですよ。食べたことがないものが多いんです。「美味しいお茶をいれて」と言ってもわからなかったり。で、みんなにバカにされる。それでもういろんなことが続かない。当たり前のことを当たり前に経験させてあげるのが一つの目標です。ただうちの塾に来て「きれい」「いい匂いがする」「片付いてる」「優しい大人が笑顔で迎えてくれる」とか、そう感じることさえ大事なんですよ。

古田そうした経験ができてないご家庭があるって…現実ですよね。昔は長屋やったから近所の人が話しかけたりして、横の繋がりがあったけど、今はマンションになってお隣の人とかわからんし、声掛けたら変人扱いされたりすることもあるし。

佐藤そうそうそう、そうなんですよ。だから、その繋がりを作ろうとして立ち上がったのが[umau.合同会社]ですね。当事者同士が助け合いをするために家の中にどんどん入って、声掛けをして孤立を防ごうって。去年の10月から始めて。

古田子どもは何の罪もないけん。

佐藤ほんと子どもは何もないですよ。頑張りたいことを頑張らせたいし、夢を見させてあげたい。そうできないのはお母さんたちの貧困にあるから、お母さんたちがちゃんと稼げるようにすることで、できることが増えると私は信じてます。

古田僕もなんか協力させてください、ほんとに。

テーブルクロスにときめいて

「きれいな服を着るのは彼女たちの目標でありたいから」と佐藤氏

佐藤でもね、10年間の苦労がなかったら、起業してもたぶん根性がなくて失敗してると思うんです。人生は選択の積み重ねでできてると思うから、なんとかかんとか言う暇があれば、ちょっとでも光がある方を見ないと。考え方がすごく大事。

古田ご自身も苦労されたから、今があるんですよね。佐藤さんはどうやって抜け出せたんですか?

佐藤私、入退院を繰り返していたとき、隣におばあちゃんが入院していて。大変な病気をしているのに、誰も来てくれなくても和やかに過ごしているんです。そのおばあちゃんは戦中戦後を生き抜いた方で、出稼ぎで中国のホテルで働いていたとき、テーブルクロスがきれいで、それにときめいて辛い時期を我慢したって言うんですよ。

古田へ~!

佐藤それを聞いたとき、自分にそれができるかなって思ったんです。18歳とか19歳で海外に一人で行かされて、言葉もわからなくて。私もまだ頑張らないといかんと思いましたね。いつもケアに来てくれる母のためにも、泣いてばかりじゃいけないって。私もそういう時期があったから、やればできるよって、苦しんでいるお母さんたちに伝えたい。病気したけれども、ちゃんと復活して今こうして活動している姿を絶望している人たちに見せたいんです。

古田誰もが一歩踏み出すことで、また楽しいことがあるよってことですよね。佐藤さんがおばあちゃんから元気をもらったように、今度は佐藤さんがお母さんたちに元気を与えられたらいいですね。

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