人生の先輩にお話を聞きに行きます! オトナ空間

久留米天使こども園 理事長・園長 早川 成 自由気ままに森で遊ぶ。

自由気ままに森で遊ぶ。

早川 成 × 古田 紀久郎

わちゃわちゃの森 にて

久留米天使こども園 理事長・園長
早川 成 Sei Hayakawa
1962年大阪府豊中市生まれ。2009年、[久留米天使こども園]の園長に就任し、2017年、理事長を兼任。「福岡県私立幼稚園振興協会筑後北部連盟」会長。生活力を重視した教育観はアイデアに満ち、その実践に邁進する。
クリエイティブディレクター
古田 紀久郎 Kikuo Furuta
1975年久留米市生まれ。生まれ育った愛すべき久留米で、クリエイティブディレクターとして数多くの広告物に関わる。“地域のおっちゃん”として子ども会を盛り上げようと活動するが、今年4度も不審者と思われ職質を受けた。

森で遊ぶ子どもが〝絶滅危惧種〟に

ここは久留米の街中から離れた場所にある、自然に満ちた遊び場[わちゃわちゃの森]。[久留米天使こども園]の理事長兼園長・早川 成氏と「おやじの会」の手によって、子どもたちのために、そして遊び心あふれるオトナのために、地元住民の理解と協力を得て作られた。
洒落た建物などない。ところどころに開けた場所があり、木材を組み合わせた遊具があるだけの気ままな空間だ。ここへ来た子どもたちは、木登りできる幹を探したり、花を見つけたり、歩き回って探検したり、自由なイメージを持って遊ぶという。
「教えることはしません。元々子どもは育つ力を持っとるし、学ぶ力を持っとるから。教えるんじゃなくて、きっかけを提供すると言うか、環境が大事という感じかな」
園長とはおよそ思えぬ風体でざっくばらんに、しかし芯の通った言葉を淀みなく紡ぐ早川氏。久留米弁の交じる口調に親しみを感じさせる。
「土の上を歩くことすら減っとるとよ。ちょっと怖いのが面白いとか、『なんやろか~』って思って近寄ってみるのが楽しいとか、そういうのが子どもたちの学ぶ力やろうに。そりゃあもう、今じゃ森で遊ぶ子どもとか〝絶滅危惧種〟よ(笑)」
今を生きる子どもたちに危機感を覚える早川氏に、木漏れ日注ぐ森のツリーハウスで話を聞いた。

経験不足の子どもたち

個性豊かな泥だんご作りに夢中な園児たち

古田勉強をする園も増えていると聞きますが、早川さんの園はちょっと変わってますよね。

早川僕は3Mと3Kが大事って言ってる。「無理」「無駄」「ムラ」を省こうって世の中はしてるけど、子どもはだいたい3Mでできとるけんね。無理なことを言うし、無駄な動きをするし、ムラだらけやろ?

古田確かにそうですねぇ(笑)。

早川3Kは「きつい」「汚い」「危険」。これも省くといかんとやん。きつか思いをせんと。で、危険なことが面白いしね。それを省くと遊べなくなるし、学べなくなるけん。

古田僕はですね、特にコロナになってみんな家で過ごすようになっとるけど、その分経験値が不足してるなって思ってるんですよ。

早川そうそう、それにオトナが気付かんといかん。コロナでそうやって閉じ込めたり、しゃべっちゃいかん、動き回っちゃいかんみたいなことのしっぺ返しがいつ来るかって読んでおかんと。仕方ないことではあるけどね。

古田オンラインは便利やけど、外で経験する痛さ、きつさとか、喜びとかもわからないような、何も五感で感じられない人ばっかりになったら怖いなぁと思います。

早川よく言うけど、知性・理性・感性・野性ってあったら、今は知性と理性を先に取り入れようとするでしょ。けどね、感性と野性の方を先に育てんといかん。

古田もうほんと転んだ痛さもわからんとか…。

早川そうそう、これは熱かけん、そっと触らんといかんとか、そういう本来持ってる本能とか野性が育たんまま、いきなり握って火傷したり、顔から地面にぶつけたりね。転んでも手が出らんけん、ケガする場所が変わっとるとよ、今の子たち。

古田受け身がとれないんですか。

早川しなやかさがないし、危機管理能力がなくなってるとよね。

古田危ない危ないってなーんもさせてもらえないし、学校ではもう先生から叩かれんですしね(笑)。

早川ちょっと乱暴な言い方やけど、叩かんで済むことで叩いたり、叩き方がわからん先生が叩いてしまう方が心配やね。変に威嚇するようになったり、しつけ方も狂ってきとるっちゃないかな。で、恨みしか残らなくて、仕返しに繋がったりね。

古田それで例えば、怒っていきなり人を刺したりとか、そういうのが増えとるのかもしれんですねぇ。

早川鬱憤がたまる前にやっぱ少しずつ発散させんといかん。小さいケガをせんけん、大きいケガをするとやけん。子どもたちはね、失敗したらもうね、二度とやりたがらんこともあるけど、いや、「失敗ばっかりばい、普通は」ってね(笑)。

生活力を育む泥だんご

「遊びの中で生きる力を育てる。それはブレたくない」と早川氏

古田そう言えば、早川さんの園では泥だんごをよく作ってますよね。

早川表面がデコボコのものができたり、形がいびつだったり、個性があって面白いとよ。うちの子たちは泥だんご作りと木登りをするけど、どっちも教えられんとやん。やってみたいと思うかどうかでしょ、まずはね。そして、どげんしたらできるか、失敗を怖がらずに何回も何回もやる。マニュアルがないからいい。

古田なんか、早川さんの教育像が表れてますよねぇ。

早川そうね、久留米の幼稚園は私立ばっかりやけん、うちみたいな所もあれば、やっぱりドリルや教材を使った学習に力を入れてる所もある。どこが正しい、何が間違いとかじゃなくて、いろんな幼稚園、保育園から選べる良さがあるよね。どんな園でどんな育ち方をするかが大事やけん。

古田早川さんはどんな経験を大事にしたいと思われますか?

早川まず生活力が大事。生活力を付けないで、なんでもオートマチックで与えられるようなオトナになったらいかんと思う。それから、自然があふれる環境も必要。あとは居場所よね。居場所って言うのは、仲間という意味もあって、一人ぼっちでご飯を食べさせないようにせないかん。よく言うやろう、家がファーストプレイスなら、学校や職場がセカンドプレイス。それ以外に行く場所がないってならんように、ここは言わばサードプレイスなんよ。

古田コロナで巣ごもりが続いている今こそ出番ですね。

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わちゃわちゃの森
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わちゃわちゃの森

住所 久留米市山本町
※私有地を借りて使用しているため、断りなく立ち入りは禁止

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久留米天使こども園

久留米天使こども園
久留米天使こども園
電話番号 0942-38-5448
住所 久留米市野中町1279
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