人生の先輩にお話を聞きに行きます! オトナ空間

ソムリエ 石橋 朋和 人にも地球にも優しい食生活を。

人にも地球にも優しい食生活を。

自然派ワイン&ワインスクール TOHAN 専務取締役
石橋 朋和 Tomokazu Ishibashi
1978年久留米市生まれ。久留米で酒屋を営む[TOHAN]の四代目。ソムリエ、ドイツワインケナー(ドイツワイン協会)。
自社でワインスクールの講師も務め、ナチュラルで美味しいワインの普及に尽力する。

老舗酒店の四代目
自然派ワインを追求する

来年1月に久留米で創業してちょうど100周年を迎えるという[TOHAN]。90年代に酒類の販売が規制緩和されると、他の小さな酒店がコンビニやディスカウントショップに転換する中、ワインに特化した専門店に生まれ変わり、ワインスクールを開講。工夫を凝らし酒店としての矜持を守り続けてきた老舗だ。
その四代目として自然派ワインにこだわった店作りを展開する石橋 朋和氏は、そもそも店を継ぐつもりはなかったとか。高校時代、大学時代とゴルフに打ち込んだが、プロの大会を目の当たりにして挫折。大学卒業後、酒類について学ぶ専門学校に進学した彼は、大阪の酒店に勤めて経験を重ね、さらにドイツ・プファルツ州のワイナリーで3年間修行を積んだ。帰国後久留米に戻ると、[TOHAN]の社員として働きながらソムリエの資格を取得したという。
「タウンページ一冊分くらいの暗記が必要です。実はドイツでワインを造ってるときは、何をしているか全然わかってなくて。帰ってきて勉強してから、ああこういうことで発酵するんだって初めて理解しました」
父から引き継いで講師を務めるワインスクールは延べ3千人の生徒を輩出しつつあるそう。昨年からはコロナ禍でオンラインによる授業をスタート。自然派ワインの良さを知ってもらうべく、活動を続けている。

自然派ワインは普通のワイン

自然派ワインは普段飲みのお酒。食事に合わせて気軽に飲んでほしい

そもそも自然派ワインとは、どのようなものですか? 

石橋フランスで生産者を日本向けに紹介している「エノ・コネクション」の代表の伊藤 與志男さんは、業界では知らない人はいないんですけど、この方の考える定義では、完全無農薬だとか厳しいものではなくて、昔農薬とか除草剤とか存在しなかった頃から造り方が変わってないワイン。だから私たちが伊藤先生から紹介してもらっているのは、基本家族経営で息子とか孫が醸造所を引き継いで、極力農薬を使わない、もしくは全然使ってないところのワインなんです。

代々伝えられてきた昔ながらのワインということですね。

石橋最近はワインに限らず、食品とか体に入れるものは、全体的に無農薬とか、有機のものが増えてますよね。その一環でワインもということで。と言っても、除草剤、農薬っていうのは1960年代から販売され始めたんで、1950年代までは、農薬とかで汚染されていない畑でできた自然なワインだったんですよ。

では、原点回帰したということでしょうか。

石橋戻ってるところもあれば、元々何もやってないところも。だから、そもそも普通のワインなんです。で、今の最先端の造りというのは、工業製ワインという感じで、味を調整しているわけです。久留米でワインを造っても、人工の酵母を使って発酵させてあげると、ボルドー風のワインを造れるというのが今の技術。そうするとブドウさえ集まればいいという造り方になってしまって、農薬とか除草剤を使って環境が汚染されていくわけです。雨とかで農薬が流れてしまうと井戸水を使えなくなったり、無農薬でやっていても農薬が溶けた水が流れ込んで病気になりやすい畑になったり、土壌にとって大切なミミズとかも全部いなくなるんですよね。地球環境が破壊されて、温暖化も進んでいくみたいな。

じゃあ自然派ワインは人間だけじゃなく、地球にも優しいんですね。

石橋そうそう、そうなんですよ。だから、今ナチュラルなワインが売れ始めてるんで、ナチュラルじゃないワインを造っている人たちもちょっとずつ無農薬に切り替えたりし始めているところです。意識が変わり始めてるみたいですね。

でも、自然派ワインって少し高いイメージがあるのですが。

石橋そんなことないですよ。基本的にはブドウって勝手に育つんですよ。それを潰してタンクに入れておけば天然酵母で勝手にお酒になる。ところが、大きなワイナリーは農薬も除草剤も大量に使うし、最新の機械を揃えて宣伝もするので、莫大なお金を投入して造ってるんですよね。

じゃあ高いからっていいお酒とは限らないんですね。

石橋ええ、そこは比例しないですね、まったく。だから、千円台、2千円台で飲みやすくて美味しい自然派ワインがどんどん普及しています。

食品もナチュラルに

私たちがワインを買うとき、自然派ワインかどうか、どうやって判断すればいいのでしょうか?

石橋日本は食品添加物の表示義務がすごく曖昧なところが多いんで、判断するのは難しくて。うちみたいに自然派ワインを売ってますよって店に行ってもらえればと思います。もしくは詳しい人に教えてもらうといいですね。うちのスクールは4月くらいから様子を見ながら、教室での開講を再開したいなと。

早くコロナが落ち着くといいですよね。お店としてはこれからどのような展開をお考えですか?

石橋実はこれからは食品だなと思ってて。お酒を飲まない人、飲めない人もいる中で、美味しく食べられる無添加の食品を増やしたいと思っているんです。ちょっと高いけど無添加で、もちろん美味しいものを並べると楽しいかなと思っています。

ワインも食品もナチュラル路線で、ということですね。

石橋はい、ナチュラルな食卓を彩るお手伝いをして、健康で長生きできる体作りを提唱したいですね。

私の必需品
ソムリエナイフ
自前のワインをランチやディナーの場に持ち込むため、ソムリエナイフをいつもカバンに忍ばせている。ワインアクセサリーのブランド「Pulltex」のアイテムで、支点となるフックが2つある「ダブルアクション」というタイプを愛用。コルクを2回に分けて引き上げ、ボトルを楽に開封できるらしい。

自然派ワイン&ワインスクール
TOHAN トウハン

自然派ワイン&ワインスクール TOHAN
自然派ワイン&ワインスクール TOHAN
電話番号 0942-32-2239
住所 久留米市東和町2-1
営業時間 11:00~20:00
※土日祝日は19:00迄
定休日 火曜
駐車場