人生の先輩にお話を聞きに行きます! オトナ空間

クラシノモト オーナー 田中 美穂 暮らしを楽しくする。

暮らしを楽しくする。

クラシノモト オーナー
田中 美穂 Miho Tanaka
1978年生まれ。2012年、セレクトショップ[クラシノモト]をオープン。久留米を拠点に全国各地の作家による器やカトラリーなど、暮らしの道具を取り扱う。

楽しく料理したい
欲しい器を求めて全国へ

外付けの階段を上がって木製のドアを開くと、光の射す白い空間にゆったりと並ぶ温かみある器たち。それぞれが持つ独自の表情を味わうべく、訪れる客は一つ一つを手に取ってじっくりと眺めている。「料理を盛り付けることで完成する器がセレクトされていると思う」「なんか味があるよね、ここにあるもの」と女性客。明るい笑い声が空間に花を添える。彼らにとってオーナー・田中 美穂氏との会話もここに来る楽しみの一つのようだ。結局、取材中客足が途絶えることはなかった。
以前から鑑賞することは好きだったという器。社会人となって時々料理をするようになると器を手に取る機会が増え、関心が高まったとか。
「料理は毎日のことだから、せっかくなら楽しくやりたいなって。気に入った器を見つけるとテンションが上がることがわかったんです」
こだわりをもって選ぶようになると、欲しいモノを見つけても近くのお店で購入できない時は、作り手の元まで出向くように。こうして、買い付けた全国各地の作家の手に成る作品をみんなで共有したいと始めたのが、セレクトショップ[クラシノモト]。オープンから10年目を迎えたことを機に、今年4月昭和通り沿いに店舗を移転。新たな環境で想いの込められた作品と日々誠実に向き合う田中氏に話を聞いた。

3年は絶対やめない

いつも使う器は気に入ったモノを使った方が毎日楽しくなる!

作家さんからの器の購入は、元々個人的に始めたんですね。

田中そうですね、自分で使うためにというところからですね。やっぱり毎日の暮らしの中で使う器とか、カトラリーにしてもリネンにしても、ちょっといいモノ、気に入ったモノがあるとテンションが上がるんで。そういう日常をちょっと豊かにする提案ができればいいなと。

お店を始めるのは勇気がいることですよね。

田中北九州に夫婦で制作されている作家さんがいらっしゃるんですけど、買い付けに行った時「お店を始めたいんです」と話したら、「3年間はどんなことがあっても頑張って続けるんだよ」という言葉を頂いたんです。今もその言葉がずっと胸に残っていて。それから3年が経って、5年、8年とショートスパンの目標を作ってやってきました。今年でやっと10年みたいな感じですね。

どのようにして作家さんの作品を選ばれているんですか?

田中皆さんそうだと思うんですけど、やっぱり趣向ってちょっとずつ変わってくるので、当時の自分の好みと今の自分の好みって変わってくるんですよね。その時々に応じて自分が好きなモノ、使いたいモノ、実際使って良かったモノを選んでます。お客さんの声に応えるためにもバラエティーに富んだモノをいろいろ見つけたいと思ってるんですけどね。もちろん使い勝手もあるので、可愛くても重すぎたり、しまいっ放しになるようなモノはちょっと。こういう器なら肉とか魚が盛れるねとか、取り皿にできるねとか、オーブンで使えるなら野菜を盛って調理してすぐ出せるとか。そういう想像ができる日常使いしやすい器を選びますね。

そうして今、お付き合いのある作家さんが各地にいるんですね。

田中北は栃木から南は沖縄まで、今はもう20、30人くらいの作家さんと取り引きがあります。お店には常時そのすべてを並べてるわけじゃなくて、その時その時買い付けに行った作家さんの作品を並べてますね。それで年に数回は個展をやってて、常設の作品はしまって一人の作家さんの作品だけを一週間くらいという感じですかね。

それは作家さんも喜ばれるのではないでしょうか。

田中そうですね、喜んで頂けてるなら良いのですが(笑)。コロナ禍でなかなか難しかったんですけど、やっと今年くらいから個展で作家さんに在廊して頂けるようになって。そうすると、器の好きな方は直接作家さんからどういう想いがあって作られたかとか、使い方とか、聞いて頂けて良いかなと思ってます。

良いですね、使う人の器に対する思い入れも違ってきますよね。

親子に求められる器

実際、器を買ってみても、使い勝手が悪くてずっと戸棚にしまっていることがあります…。

田中もったいないですよね。毎日使うものだから、良いモノを見つけてもらえたら。小さいお子さんがいる方は、うちで扱う作品性の高い器って敬遠されがちなんですけど、小さい頃から使ってると子どもたちも大事にしてくれたりするんですよ。

なるほど、そんなにぞんざいに扱えないという意識が幼いながらに生まれるわけですね。

田中そうそう、そうやってご家族で小さい頃から使って頂いて、大きくなってからうちに来て、自分で選んでもらったりするのも嬉しいです。親子でお客さんが繋がっていくのはすごく良いなぁと思います。オープンして10年経った今ではそういうことも楽しみですね。

お店を移転されて、今後はどんな展開をお考えでしょうか?

田中10年の節目ということもあって、チャレンジをと思って4月に移転したんです。展示会やイベントももう少しやっていけたらと思いますし、動きやすくなったので、もっといろんな所に行って作家さんとお会いしたいですね。今のコンセプトを大事にしつつ、自分で足を運んで自分の目で見て選んで、幅を広げていきたいと思ってます。

私の必需品
ピアス
田中氏の耳元には[クラシノモト]の棚にも並ぶアクセサリーブランド「eri,」のピアスが揺れる。デザイナー・深田 恵里氏による革製のアクセサリーで、これを身に付けると仕事モードのスイッチがオン。気合いが入るとか。なお、6月下旬には店内で「eri,アクセサリー展」の開催を予定している。

クラシノモト

矢部屋 許斐本家
矢部屋 許斐本家
0942-27-9731
[所] 久留米市通町105-21 2F
[営] 12:00~17:00
[休] 月曜※ほか不定休あり
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