欲張らず、楽しみながら。
- 株式会社サンテングヤ 常務取締役
稗島 大督 Daisuke Hieshima - 1980年久留米市生まれ。[サンテングヤ]の跡継ぎ。SC接客マイスターの資格を持ち、[ゆめタウン久留米店]の店長として、人との繋がりを大事にしながら日々店頭に立つ。趣味はサッカーとゴルフ。
昭和初期から約百年
靴屋の暖簾を守り続けて
昭和43年と手書きで記された1枚の白黒写真。西鉄久留米駅付近で国道3号線と交わる東町交差点を撮影したものという。10数台の車が入り乱れてひしめく通りの向こうに、「てんぐや」の堂々たる看板が掲げられる。現在、久留米市内に3店舗を構える靴屋[サンテングヤ]だ。
西鉄久留米駅が開業したのは大正13年。電車が通れば繁盛するだろうと、昭和初期に稗島 大督氏の曽祖父が駅の近辺で下駄や草履などの和装小物を扱う問屋を始めた。製品の卸売りと並行して小売りに着手したのは祖父の稗島 寛氏。当時、[天狗屋]と称した同社はこうして創業すると、時代の移り変わりとともに婦人靴を取り扱うように。今年で50周年を迎える[岩田屋 久留米店]がのちに入居した米城ビルの開業・運営にも携わり、久留米を代表する靴屋として大きく成長した。
後継となる大督氏は、大学卒業後、同社も取り扱う革靴ブランド「REGAL」を製造・販売する[リーガルコーポレーション]に入社。約5年間、靴の販売や営業について基礎から学んだ後、トップ企業で培ったスキルと持ち前のポジティブ精神を活かして[サンテングヤ]をリードしてきた。今回は同社代表を退いた祖父の寛氏にも同席頂き、戦後、久留米とともに発展してきた彼らの三代に及ぶ物語を紐解きたい。
遊びながら仕事も
昔は草履や下駄を取り扱っていたんですね。靴はいつからですか?
寛だんだん時代が変わってきて、草履と下駄じゃ商売が成り立たんってことで、昭和47年に岩田屋ができる頃には靴を始めとったけん、たぶんそれよりちょっと前です。
大督しばらくは和装小物と靴と売り場を分けて両方やっていたみたいです。でも、和装小物がいよいよ厳しくなってきて、紳士靴を置くようになったんですね。
寛問屋街があったもんね、三本松公園とかあの辺に。だけん、最初のうちは苦労したですたい。あと、ユニードってスーパーもあったでしょ。あそこがものすごく売れとったけん、小売り屋は潰れるって言われよったけど、うちは抵抗したとですよ。
大督でも、その頃から高度経済成長にのって岩田屋がどんどん成長して。一番街とかも、あの辺はすごく栄えてましたよね。久留米に来るとなんでもあるみたいな。
賑やかでしたよね。その中でサンテングヤさんはどんな戦略を?
大督安売りはしたくないと、ちょっと良いものを置きたいというのが祖父の望みだったようで、うちは高級品を扱い始めたんです。それが今も受け継がれてますね。
寛お客さんが簡単に手の届くものばっかり置いとくと伸びんから。少し頑張れば買えるやろうとか、いつかはこっちを買いたいとか、そういうものを置かんと、店の価値が上がらんってことでですね。
ブランド品を多く取り扱うようになったのもそのためですか?
大督草履とか下駄とかは卸売りをやってたから良かったようですけど、靴はうちよりも早くブランド品を扱っている店がいっぱいあったからなかなか問屋さんもメーカーさんも売ってくれなくて、祖父と祖母はすごく苦労したみたいですね。取引先を開くっていうのが一番大変ですよね。でも、今置いてる高級ブランドは全部祖父が開拓したところです。
寛アメリカによく行きよったです。
大督店頭に立って仕入れをするとか細かいところは全部祖母がしていて、祖父はなかなか家にいなかったらしいです。仕事が忙しいというのもあるけど、遊びに行ってたんじゃないですか?(笑)。
寛野球もゴルフも麻雀も好きです。遊びながら仕事もするけん。
大督僕もあんまり人のことは言えませんけど(笑)。でも、なんでも0から1にするのが一番大変ですもんね。それをしたのは祖父ですから。まとめると、楽しみながら仕事するってことでしょうね。
小さな器で食べていく
大督さんは跡継ぎとして、どんなお店を目指してますか?
大督今社長をしている父は、接客をすごく大切にしています。だから、僕もやっぱり良い接客をしてお客様にうちのファンになって頂けるようにということは意識してますね。その方がお子さんだったり、お友達だったり、ご親戚を連れてきてくださるように。今うちは3店舗を運営してるんですが、これを10店舗、100店舗にしたいとは考えてません。大それた目標とかはなくて、地域一番店を目指していきたいかなと。
寛手広くやろうとすると、それだけ苦労は増えるだけやけん、小さな器で食べていければよかとですよ。
大督僕もそんなに知ってるわけじゃないですけど、高度経済成長のとき、多店舗化して売上だけ上がったところは、今はほぼ店がなくなってますよね。うちは店をあんまり出さなかったから、失敗せずに今まで続いてるのかもしれません。
欲を出して目先の利益に走らないということですね。
大督欲張りすぎるとロクなことはないみたいに祖父は言ってましたね。
寛やけん、ケガも少なかった。もっと欲張ってたら、もっと儲けてたかもしれん(笑)。
大督もちろん、現状を維持するためにはチャレンジが必要ですから、やり方も商品構成も変えていかないと。高級品ばかり置いてた時代とは変わってきてるからですね。課題は山積みだと思います。
寛すべてを期待してます。
大督特にプレッシャーもないですけど、頑張ります(笑)。
サンテングヤ
本店
☎ | 0942-34-1155 |
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[所] | 久留米市天神町1-1 岩田屋久留米店2F |
ゆめタウン久留米店
☎ | 0942-45-7194 |
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[所] | 久留米市新合川1-2-1 ゆめタウン久留米店1F |
REGAL SHOES久留米店
☎ | 0942-38-1395 |
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[所] | 久留米市天神町1-1 岩田屋久留米店2F |