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全国総本宮 水天宮 第29代宮司 眞木 啓樹 人が寄り集まる場に。

人が寄り集まる場に。

全国総本宮 水天宮 第29代宮司
眞木 啓樹 Hiroki Maki
1979年久留米市生まれ。[太宰府天満宮]で3年間修業を積んだのち、実家でもある[水天宮]に入社。今年4月、同社宮司に任じられる。学生時代はラガーマン。現在はジムに通い、筋トレをこよなく愛する。

平氏の血を引く
宮司家に生を享けて

壇ノ浦の戦いに敗れ、没落した平氏。安徳天皇の母に仕える按察使局伊勢は筑後川の辺りに逃れ、入水した幼い天皇を弔うべく[水天宮]を祀った。彼女がその跡を継がせた平 知盛の孫・平 右忠に、同社の宮司家は始まるという。第16代のとき、子どもに恵まれず、平氏が落ち延びたとされる熊本県菊池郡の眞木村より後継を迎えたことから眞木と名を変え、第22代には勤王の志士として活躍した眞木和泉守を輩出。そして今年4月、第29代宮司に就任したのが眞木 啓樹氏である。
「あなたが水天宮の跡継ぎさんなんだから」と、幼い頃より周囲から嘱望されていた眞木氏。登校前、毎朝執り行われる日供祭に参列し、神様に捧げられる祝詞を聞いていたとか。期待通りに、大学卒業後は神職を志して神道学専攻科へ。24歳のとき[太宰府天満宮]に入社すると、そこで神職のいろはを学び、27歳のとき[水天宮]に帰って来た。それから約16年間、父の背中を見ながら共に神社を支え、9年前には長らく籍の空いていた権宮司に。
「宮司になってもご奉仕をする内容は変わりません。神社の維持・運営をしつつ、時代に合った神社を作っていくのが一番かなと思ってます」 43年間宮司を務めてきた父より、ついにその職を受け継いだ眞木氏。新たな宮司の胸に宿る想いとは――。

良いタスキを渡すために

参拝にいらした方が心にゆとりを持てる空間を作りたい

眞木さんは、宮司さんとしてはとてもお若いですよね。

眞木父が宮司を務めた年月と私の43という歳は同じなんですが、父が宮司になったのは32歳のときなんですね。そう考えると決して若くはないのかなと思います。今は名誉宮司になって、草むしりをしたり、電気の見回りをしたり、すごく助かってますね。警備員さんみたいな感じで(笑)。まあ、どうしても親子ですから、意見が食い違うこともありますけど、神社を良くしたいという目的は同じなので。

世襲で継いでいくのは、どんなお気持ちなのでしょうか?

眞木[太宰府天満宮]の宮司さんから言われたのは、世襲というのは駅伝に近いと。だから、いかに良い状態でタスキを次の人にバトンタッチできるかというのがすごく大事で。まあ、竹で言うと一つの節をいかに大きくできるか、それはあなた次第だよと言われたことがありまして。父には一緒にお酒を飲んでいたとき、「息子は人生最大のライバル」と言われました。衝撃的だったんで忘れられないんですけど。

どういう意味なんでしょう?

眞木自分を抜いてくれないと面白くないし、そうあって欲しいという願いだったのかなと思います。まあ、私が70歳まで生きるとしたら、宮司をやる時間がおそらく20年30年あるのかなと。その中でいかに竹の一節を大きくするかですよね。人生が終わったとしても宮司は終わるわけではないので、良い形で息子にバトンタッチできるように。だからなおのこと、ありがたいことに3人の男の子がいるんですが、特に長男には厳しくなってしまうんですよ。たぶん嫌だろうなと(笑)。

眞木さんの想いが息子さんに伝わると良いですね。

神社の存在意義

毎年11月の九州場所のとき、お相撲さんが神社に来てるとか。

眞木[太宰府天満宮]に伊勢ヶ濱部屋の親方が宿舎を構えられてたんですよ。そこの元関脇の安美錦関に、私がこちらに帰ってくるときにうちにも来てくださいよと話をちらっとしたんです。それを快諾してもらったのがもう16年前。それから[水天宮保育園]の子どもたちと一緒に触れ合いの相撲をするという時間を毎年作ってもらってます。実はそういうご縁から、安美錦関が引退されたとき、親方として部屋を構えるにあたって宿舎を[水天宮]にというお話がありまして。せっかくこうやってお付き合い頂いているんで、ぜひどうぞとお伝えしました。お弟子さんがつかないと部屋はできませんから、まだこれからなんですけどね。

素敵なご縁ですね。お稽古は一般の方も見られるのでしょうか?

眞木もちろん、ぜひ見て欲しいと思ってます。そうやって応援してもらえる方が喜ぶと思いますね。神社って古くて暗いイメージがあると思うので、賑やかなイメージになるといいなと思ってます。本殿の周りは多くの方にご祈願にお見え頂くのですが、境内の南側は北側に比べると人が集まりにくくて。最近は、例えばマルシェを入れたり、コンサートが入ったりしています。昔なら考えられないことかもしれませんが。

そういうきっかけとか、親しみを持てる場があると、若い人たちもお参りしやすくなりそうです。

眞木基本的に神社って人が寄り集まるところであって、人を呼び込むところではないと思っているんです。決して観光とかではなくですね。人を呼び込むというより、人が自然に集うというか。そういうイメージが私の理想です。[水天宮]がここにある存在意義とか価値とか、そういったものが伝わるといいかなと思いますけどね。

気軽に来られて、心の支えになるような場所になると良いですね。

眞木そうですね。私はここから見える背振山に沈む夕日が好きなんですよ。夏は特に真っ赤になって。筑後川を見に来られる方もおられるだろうし、きっかけは何でもいいんですよ。「行くと落ち着くね」とか。そういう空間として、神社って良い意味を持っているなと思います。

私の必需品
神職が祭祀や祈願を執り行う際、右手に持つ笏。眞木氏は3本を使い分けている。左は普段使いのもの、中央は自宅でお祀りする祖霊社で使っているもの。右は[太宰府天満宮]の同期入社の方より贈られたもので、裏に眞木氏の名が彫られている。大切な一本であるため、重要な祭祀のときのみ手にするそう。

全国総本宮 水天宮

全国総本宮 水天宮
全国総本宮 水天宮
0942-32-3207
[所] 久留米市瀬下町265-1
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